名古屋地方裁判所 昭和47年(行ウ)38号 判決 1980年8月29日
豊田市樹木町四丁目二七番地
原告
成瀬保行
右訴訟代理人弁護士
伊藤典男
同
伊藤誠一
同
八木真
岡崎市明大寺本町一丁目四六番地
被告
岡崎税務署長 魚住修久
右指定代理人
松津節子
同
簑毛荒
同
北川拓
同
山本正一
同
横井芳夫
主文
一、原告の請求をいずれも棄却する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一申立
(原告)
一 被告が原告に対し、原告の昭和四二年分所得税について昭和四五年七月九日付でなした更正処分のうち総所得金額一四五万三、五〇五円を超える部分および過少申告加算税賦課決定処分を取消す。
二 被告が原告に対し、原告の昭和四三年分所得税について昭和四五年一一月八日付でなした再再更正処分(但し、裁決によより取消された部分を除く。)のうち総所得金額一六四万八、四〇〇円を超える部分および過少申告加算税賦課決定処分を取消す。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決。
(被告)
主文同旨の判決。
第二主張
(原告)
請求原因
一 原告は、昭和四二年分所得税について昭和四三年三月一五日に、昭和四三年分所得税について昭和四四年三月一五日にそれぞれ別表一「課税処分表」の各「確定申告額」欄記載のとおりの数額により、確定申告書(白色)を被告に提出した。
二 被告は、原告の昭和四二年分所得税について、昭和四五年七月九日別表一「課税処分表」の昭和四二年分「更正額および賦課決定額」欄記載のとおりの更正処分および過少申告加算税賦課決定処分をなした。
また、被告は、原告の昭和四三年分所得税について、別表一「課税処分表」の昭和四三年分「更正および賦課決定額」欄記載のとおり、昭和四五年六月八日に更正処分および過少申告加算税賦課決定処分、同年七月九日に再更正処分および過少申告加算税賦課決定処分、同年一一月八日に再再更正処分および過少申告加算税賦課決定処分をなした(以下、昭和四二年分所得税に係る更正処分および過少申告加算税賦課決定処分、昭和四三年分所得税に係る昭和四五年一一月八日付再再更正処分および過少申告加算税賦課決定処分を「本件課税処分」という。)。
三 原告は、昭和四二年分所得税に係る本件課税処分を不服として、昭和四五年九月八日被告に対して異議申立をしたが、被告は同年一一月二五日右申立を棄却する旨の決定をなした。
また、原告は、昭和四三年分所得税に係る前記更正処分および過少申告加算税賦課決定処分につき昭和四五年八月一〇日に、さらに前記再再更正処分および過少申告加算税賦課決定処分につき同年九月八日にそれぞれ被告に対し異議の申立をしたが、被告は、昭和四五年八月一〇日付申立につき同年一一月八日付で、昭和四五年九月八日付申立につき同年一一月二五日付でそれぞれ申立を棄却する旨の決定をなした。
四 原告は、右各異議決定を不服として、昭和四五年一二月二八日訴外国税不服審判所長に対し審査請求をなしたところ、右国税不服審判所長は、昭和四七年七月二九日昭和四二年分所得税に関する審査請求については棄却の裁決を、また昭和四三年分所得税に関する同請求については、別表一「課税処分表」の昭和四三年分「審査裁決額」欄記載のとおりの数額にするとの本件課税処分の一部を取消す裁決を行った。
五 しかしながら、本件課税処分はいずれも原告の所得を過大に認定した違法なものであるから、原告は前記申立掲記の裁判を求める。
(被告)
請求原因に対する認否
請求原因一ないし四の事実は認める。
同五の主張は争う。
被告の主張(本件課税処分の適法性)
一 原告は本件係争年当時、不動産売買業、農業、貸金業を営んでいたものであるが、本件係争各年分における総所得金額は、別表二「総所得金額計算表」の「被告主張額」欄記載のとおり、昭和四二年分は四七五万〇、四四〇円、昭和四三年分は九〇八万四、一三三円である。
従って、右総所得金額の範囲内でなされた本件課税処分はいずれも適法である。
次頁以下において、右総所得金額を構成する営業所得金額、農業所得金額および譲渡所得金額について詳述する。
二 営業所得金額
(一) 本件係争各年分における原告の営業所得金額の内訳は、別表三「営業所得金額計算表」の「被告主張額」欄に記載のとおりであり、同表中の総収入(売上)金額の明細は別表四「総収入金額の明細」に記載のとおりである。
右営業所得にかかる各必要経費の算出内訳は次のとおりである。
(二) 売上原価
不動産売買に関する売上原価の算出内訳は次のとおりである(なお、以下表示する「番号」は、別表四「総収入金額の明細」の「番号」に符合する。)。
1 昭和四二年分
<省略>
(なお「放棄競売保証金」欄は、競落人であった原告が代金支払期日に競落代金を完全に支払わなかったため民事訴訟法第六八八条五項による返還を求めることのできなくなった競売の保証のため預けた金員の額である。原告は再競売において自己の襄名義により当該不動産を競落して取得したものである。)。
右の表のうち
番号12の土地にかかる取得価額六七万二、〇〇〇円は、原告の売却した土地の面積が一六〇坪であり、これは原告の購入した土地二二四坪の一部であるから、二二四坪の取得価額九二万八、〇〇〇円(内訳一六〇坪分は坪当り四、二〇〇円、その余の六四坪分は坪当り四、〇〇〇円)を基礎として、次の算式により算定したものである。
(算式)
売却土地面積 坪当り単価 売却土地にかかる取得価額
160坪×4,200円=672,000円
番号6の土地にかかる取得価額九八万五、〇〇〇円および登録税、登記手数料等二、〇九二円は、原告の売却した土地の面積が一九七坪であり、これは原告の購入した土地二二七坪の一部であるから、二二七坪の取得価額一一三万五、〇〇〇円および登録税、登記手数料等二、四一〇円を基礎として、次の算式により算定したものである。
(算式)
(1) 売却土地にかかる取得価額の計算
<省略>
<省略>
(2) 登録税、登記手数料等の計算
<省略>
<省略>
番号13ないし15の土地にかかる取得価額二六万九、八八四円、登録税登記手数料等一万三、一八六円および不動産取得税一、〇九五円は、原告の売却した土地の面積が二六〇坪および一〇坪であり、これは原告の購入した土地二、三一八・五坪および土地三八二坪の一部であるから、二、三一八・五坪および三八二坪の取得価額等(その内訳は次表のとおりである。
(表)
<省略>
(算式)
(1) 売却土地にかかる取得価額の計算
<省略>
(2) 登録税、登記手数料等の計算
<省略>
(3) 不動産取得税の計算
<省略>
2 昭和四三年分
<省略>
右の表のうち
番号1ないし6の土地にかかる取得価額六九万九、九九七円、登録税登記手数料等二万三、七九九円、不動産取得税一万二、三四四円および整地費用六二万五、五九二円は、原告の売却した土地の面積が九一五・八七平方米であり、これは、原告の購入した土地九三五・五平方米および一二二・三一平方米の一部であるから九三五・五平方米および一二二・三一平方米の取得価額等(同地上の建物も含め取得に要した費用は次表のとおりである。)を基礎として次の算式により算定したものである。
なお、整地費用は売却した土地の地上建物を取りこわし、建物の古材を原告が取得して当該土地を更地化した費用である。
(表)
<省略>
(算式)
(1) 売上土地にかかる取得価額の計算
<省略>
<省略>
(2) 整地費用(地上建物除去にかかる使用)
<省略>
<省略>
(3) 登録税、登記手数料等の計算
<省略>
<省略>
(4) 不動産取得税の計算
<省略>
<省略>
番号12の土地にかかる取得価額二五万三、二八〇円および登録税、登記手数料等二万三、九〇三円は、原告の売却した土地の面積が七〇・九五平方米であり、これは原告の購入した土地二七〇・七四平方米および同地上建物延九九・一六平方米の一部であるから、土地二七〇・七四平方米および同地上建物の取得価額九九万四、五〇〇円を基礎として次の算式により算定したものである。
(算式)
(1) 売却土地にかかる取得価額の計算
<省略>
<省略>
(2) 登録税 登記手数料等の計算
<省略>
<省略>
番号17の土地にかかる取得価額一七万七、九〇五円は、原告の売却した土地の面積が六八六平方米であり、これは原告のの購入した土地一、九二八平方米の一部であるから、一、九二八平方米の取得価額と認められる五〇万円を基礎として次の算式により算定したものである。
(算式)
<省略>
<省略>
(三) 租税公課昭和四二年分三万一、三〇〇円、昭和四三年分一七万三、七五〇円租税公課の明細は次のとおりである。
1. 昭和四二年分
(1) 自動車税 二万一、七五〇円
<1> 昭和四一年九月三〇日に取得し、同四二年九月八日に譲渡(下取)したブルーバードDP四一一W型(総排気量一・三リットル)に対するもの・・・・一万五、七五〇円(右自動車は地方税法一四七条一項一号の「四輪以上の小型自動車に属するもの」に該るので、その標準税率年額二万一、〇〇〇円×9/12(昭和四二年一月から同年九月まで、同法一五〇条二項))
<2> 昭和四二年九月八日に取得したブルーバードP五一〇TK型(総排気量一・六リットル)に対するもの・・・・六、〇〇〇円(地方税法一四七条一項一号による年額二万四、〇〇〇円×3/12(昭和四二年一〇月から同年一二月まで、同法一五〇条一項))
(2) 固定資産税 九、五五〇円
昭和四二年度において豊田市が原告に賦課した固定資産税の総額である。
なお、右の固定資産税には、たな卸資産でないものに対し課された税額が含まれているが、これを除外する作業は、きわめて複雑繁多にわたるため総額によった。
また、被告の調査によれば、昭和四二年一月一日(昭和四二年度分の固定資産税にかかる賦課期日・・・・地方税法三五九条)現在において原告が有していたたな卸資産は豊田市以外には見当らない。
(3) 計((1)+(2)) 三万一、三〇〇円
2. 昭和四三年分
(1) 自動車税 二万四、〇〇〇円
昭和四二年九月八日に取得したブルーバードP五一〇TK型(総排気量一・六リットル)に対するものの年額(地方税法一四七条一項一号の「四輪以上の小型自動車に属するもの」)
(2) 固定資産税 一二万〇、八〇〇円
昭和四三年度において次の市(区)町が原告に賦課した固定資産税の総額である。
<1> 豊田市 一万〇、四三〇円
<2> 名古屋市千種区 七、三七〇円
<3> 〃 〃 (猪髙支所) -円
<4> 名古屋市港区区 四、九〇〇円
<5> 中区 一万七、三〇〇円
<6> 昭和区 二万三、二八〇円
<7> 北区 一万三、八〇〇円
<8> 瀬戸市 一万七、五四〇円 一万四、一九〇円
<9> 安城市 -円
刈谷市 -円
愛知県知多郡東浦町 一万〇、七八〇円
〃 額田郡幸田町 -円
〃 愛知郡豊明町 -円
〃 〃 日進町 -円
〃 海部郡佐屋町 一、二一〇円
計(<1>~<15>) 一二万〇、八〇〇円
なお、被告の調査によれば、昭和四三年一月一日(昭和四三年度分の固定資産税にかかる賦課期日・・・地方税法三五九条)現在において原告が有していたたな卸資産の所在市(区)町は、前記一五市(区)町である。
また、豊田市分については、昭和四二年分と同様の理由により、たな卸資産以外のものに課された額を含んだ総額によった。
(3) 事業税 二万八、九五〇円
昭和四三年中に納付税額が確定した事業税(県税)であり、その税額の算出根基は次のとおりである。
<1> 課税標準額 八四万九、〇〇〇円
<2> 事業主控除 二七万〇、〇〇〇円
<3> 事業税額 二万八、九五〇円((<1>-<2>)×〇・〇五)
(4) 計((1)+(2)+(3)) 一七万三、七五〇円
(四) 通信費昭和四二年分七万五、二四〇円、昭和四三年分八万五、一六二円。
本件係争各年当時、原告の住所に設置されていた電話(猿投局四五-〇三三三番・・・・現在は豊田局四五-〇三三番)の電話料および使用料である。
(五) 修繕費昭和四二年分一、七〇〇円。
昭和四二年九月八日愛知日産自動車株式会社岡崎支店(現在の愛知東日産モーター株式会社岡崎営業所)を経由して支払った同日取得のブルーバードP五一〇TK型の車検登録費用である。
(六) 消耗品費、昭和四二年分五万九、八一五円、昭和四三年分五万六、七五〇円。
豊田市貝津町鉄砲迫三〇ノ一深見スタンドにおいて購入したガソリン代である。
(七) 減価償却費昭和四二年分一一万一、五五二円、昭和四三年分一一万二、七九七円。
原告が事業(営業)に使用している自動車の減価償却費であり、その計算明細は次のとおりである。
<省略>
<省略>
なお、減価償却の方法を選定していない場合の減価償却の方法は定額法によることとされているところ(所得税法四九九条一項、同法施行令一二五条一項)、原告は減価償却の方法を選定して届出ていないので定額法により計算したが、定額法による算式は次のとおりである。
償却の基礎になる金額〔取得価額-残存価額(取得価額×〇・一〕×償却率=減価償却費
(所得税法施行令一二〇条一号イ、減価償却資産の耐用年数等に関する省令五条及び同別表一一参照)
原告が使用している自動車の耐用年数は六年であり、(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表(昭和四一年歳令三七号改正)「車両及び運搬具」参照)
耐用年数六年の定額法の償却率は〇・一六六である。
(
(八) 利子割引料、昭和四二年分二万六、一三六円、昭和四三年分三万四、五六〇円。
自動車の購入にあたり、その購入代金の一部を割賦(月賦)支払によったことに伴い、右代金の一部に付加して支払った月賦手数料を利息と認定したものであり、その算定根基は次のとおりである。
なお、右月賦手数料を利息と認定したのは、同手数料が月賦元金(月賦支払とした自動車購入代金)の額及び月賦月(回)数を基として所定の料率(日歩)に従い算定されているとともに、自動車業界はもちろん一般経済社会においても右手数料は利息(金利)と認識されていることによるものである。
(算定根基)
月賦手数料の額は、アドオン(add on)方式によって計算されているため、右方式に従い左のとおり本件係争年中の必要経費となる利息を算定した。
なお、アドオン方式とは、比較的短期の消費者金融などに使われる均等償還貸付けの一種で、元金にあらかじめ金利を上乗せし、その総額を毎日均等に返済させる方式。(この方式によるとたとえば、アドオン(add on)金利が年一〇%で、一〇〇万円に金利の二〇万円(一〇〇万円×一〇%×二)を加えた一二〇万円を二四等分した五万円となる。)
1. 昭和四一年九月購入分(ブルーバードDP四一一W型)
(1) 月賦元金 <1>二七万円
(2) 月賦月数(回数) <2>一二ケ月(<3>一二回)
(3) 各月賦手形の支払期日 昭和四一年一〇月から同四二年九月迄の各月末
(4) 月賦手数料総額 <1>二七万円×<2>一二×三〇×〇・〇〇〇二
(一ケ月の日数)(料率・・日歩)
四=<4>二万三、三二八円
(5) 各月賦手数料総額 (<1>二七万円+<4>二万三、三一八円)÷<3>一二=二万四、四四四円
(6) 右の内訳
(イ) 月賦元金 <1>二七万円÷<3>一二=二万二、五〇〇円
(ロ) 月賦手数料 <4>二万三、三二八円÷<3>一二=<5>一、九四四円
(7) 昭和四二年分の必要経費となる利息(月賦手数料)の額
<5>一、九四四円×九(昭和四二年一月から同年九月迄の各月末を支払期日とする月賦手形の数)=一万七、四九六円
2. 昭和四二年九月購入分(ブルーバードP五一〇TK型)
(1) 月賦元金 <1>四〇万円
(2) 月賦月数(回数) <2>二四ケ月(<3>二四回)
(3) 各月賦手形の支払期日 昭和四二年一〇月から同四四年九月迄の各月末
(4) 月賦手数料総額 <1>四〇万円×<2>二四×三〇×〇・〇〇〇二(一ケ月の日数)
(料率・・・四=<4>六万九、一二〇円日歩)
(5) 各月賦手形の金額 (<1>四〇万円+<4>六万九、一二〇円)÷<3>二四=一万九、五四六円
(6) 右の内訳
(イ) 月賦元金 <1>四〇万円÷<3>二四=一万六、六六六円
(ロ) 月賦手数料 <4>六万九、一二〇円÷<3>二四=<5>二、八八〇円
(7) 昭和四二年分の必要経費となる利息(月賦手数料)の額
<5>二、八八〇×三(昭和四二年一〇月から同年一二月迄の各月末を支払期日とする月賦手形の数)=八、六四〇円
(8) 昭和四三年分の必要経費となる利息(月賦手数料)の額
<5>二、八八〇円×一二(昭和四三年中の各月末を支払期日とする月賦手形の数)=三万四、五六〇円
(九) 損害保険料昭和四二年分一万五、七九七円、昭和四三年分八、六一五円。
自動車の所有者に加入を強制される、いわゆる自賠法による強制賠償保険料であり、その明細は次のとおりである。
1. 昭和四二年分
(1) 昭和四一年九月三〇日購入のブルーバードDP四一一W型に対するもの・・・・・一万二、九二五円
昭和四一年九月三〇日から向う二ケ年間の保険料が一万五、五一〇円であり、かっこの自動車は昭和四二年九月八日に譲渡(下取)しているから
<1> 昭和四一年分の必要経費となる部分・・・一万五、五一〇円×4/24=二、五八五円
<2> 昭和四二年分の必要経費となる部分・・・一万五、五一〇円×9/24=五、八一七円
<3> 譲渡(下取)の際、譲受人との間で精算する部分・・・一万五、五一〇円×11/24=七、一〇八円
となるが、<3>の部分の精算がなされたかどうかは明らかでないので<2>および<3>の合計額一万二、九二五円を昭和四二年分の必要経費と認定した。
(2) 昭和四二年九月八日購入のブルーバードP五一〇TK型に対するもの・・・二、八七二円
昭和四二年九月八日から向う二ケ年間の保険料が一万七、二三〇円であるから
一万七、二三〇円×4/24=二、八七二円
が昭和四二年分の必要経費に算入される金額となる。
(3) 計 ((1)+(2))・・・一万五、七九七円
2. 昭和四三年分
昭和四二年九月八日購入のブルーバードP五一〇TK型に対するもの・・・八、六一五円
昭和四二年九月八日から向う二ケ年間の保険料が一万七、二三〇円であるから
一万七、二三〇円×12/24=八、六一五円
が昭和四三年分の必要経費に算入される金額となる。
(一〇) 雑費昭和四二年分四万三、五八九円、昭和四三年分一、三四八円
競落代金の納入遅延に伴う費用として名古屋地方裁判所に納入した遅延費用であり、その明細は次のとおりである。
1. 昭和四二年分
(1) 昭和四〇年(ケ)第二四五号事件 二、二一九円
(2) 昭和四〇年(ケ)第二七一号事件 二万一、四八九円
(3) 昭和四一年(ケ)第二九四号事件 一万四、二〇九円
(4) 昭和三九年(ケ)第七六号事件 五、六七二円
(5) 計 ((1)+(2)+(3)+(4)) 四万三、五八九円
2. 昭和四三年分
昭和四一年(ヌ)第五六号事件 一、三四八円
(一一) 競売保証金放棄損失昭和四二年分五四万一、〇〇〇円、昭和四三年分八一万三、五〇〇円
競落人であった原告が代金支払期日に競落代金を完全に支払わなかったため、民事訴訟法六八八条五項による返還を求めることのできなくなった競売保証金(再競売において原告の妻名義により当該不動産を競落したものを除く。これは、当該不動産の売上原価に算入すべきものである。)であり、その明細は次のとおりである。
1. 昭和四二年分
(1) 名古屋地方裁判所昭和四一年(ケ)第二七三号事件 九万九、〇〇〇円
(2) 〃 昭和四〇年(ケ)第二五三号事件 三九万五、〇〇〇円
(3) 〃 昭和四一年(ケ)第一二四号事件 四万七、〇〇〇円
(4) 計 ((1)+(2)+(3)) 五四万一、〇〇〇円
2. 昭和四三年分
(1) 名古屋地方裁判所岡崎支部昭和四二年(ケ)第二一号事件 五一万円
(2) 〃 昭和四二年(ケ)第四号事件 三〇万三、五〇〇円
(3) 計 ((1)+(2)) 八一万三、五〇〇円
(一二) 販売手数料昭和四二年分二二万円、昭和四三年分八五万円
不動産の販売にあたり支払った手数料であり、その明細は次のとおりである。
1. 昭和四二年分
<省略>
2. 昭和四三年分
<省略>
なお、訴外西山弘に対する昭和四三年二月一五日支払の二〇万円は昭和四二年中の売上に対するものであるが<1>支払が取引時期(昭和四二年一一月頃)から相当期間を経過した昭和四三年二月一五日であること、および<2>支払額が取引価額の一定割合となっていないこと等から、昭和四二年中に支払うべき額が確定していたとは認められない。従って現実に支払われた時の属する昭和四三年分の必要経費と認定したものである。
また、訴外西山弘に対する昭和四三年三月九日支払の一〇万円について、支払額一五万円のうち五万円は被立替金の返戻であるので、一〇万円が販売手数料となる。
三 農業所得金額
別表二記載の本件係争各年分における原告の農業所得金額の算出内訳は次のとおりである。
(一) 昭和四二年分一六万三、七〇六円
原告が作成し、豊田市役所に提出した「耕作田畑地積調査票」記載の耕作地積から大字越戸地内所在のものを除いた残地積等を基として、岡崎税務署と同署管内市町村が共同して策定した「農業所得標準率表」(この標準率表は収入金額および経費等の調査結果と各種資料を基にし、さらに農業団体等の意見を十分聴取したうえ合理的に策定されたものであり、農業団体等にも公開し、農業所得者の所得税および住民税の所得申告の指針として広く利用されているものである。)等により次により算定したものである。
なお、大字越戸地内所在の耕作地積を除いたのは、<1>原告の住所地から比較的遠隔地であることおよび<2>当該耕作地は原告が販売目的で購入したもの(たな卸資産)であることなどから、通常の肥培管理が困難ないしは粗雑に陥いりやすい点を考慮したためである。
(算定内訳)
(1) 特別経費等控除前の所得金額 二二万一、三三〇円
(右の内訳)
<省略>
なお、田の面積は大字越戸地内所在分を除く面積の合計四反二畝一〇歩から畦畔二六歩を控除したものである。
また、畑の面積は大字越戸地内所在分を除く面積の合計二反五畝二四歩から畦畔一六歩を控除したものである。
(2) 特別経費等の額 五万七、六二四円
(右の内訳)
<省略>
(3) 農業所得金額((1)-(2)) 一六万三、七〇六円
なお、土地改良費は土地改良区に支払った土地改良費のうち農業所得の必要経費となる部分の金額である。
また、予約米減税については昭和四三年法律第一号「昭和四二年度産米穀についての所得税及び法人税の臨時特例にに関する法律」第一条により農業所得に係る総収入金額に算入しないこととされている数額であるが、前述の「農業所得標準率表」の作成技術上、総収入金額から控除することなく、特別経費控除前の所得金額から特別経費に準じて控除する仕組を採用した。
2. 昭和四三年分一四万八、四〇〇円
原告が昭和四四年三月一五日被告に提出した昭和四三年分所得税の確定申告書に記載されている農業所得の金額によったものである。
四 譲渡所得金額(昭和四二年分)別表二記載の△一九万八、一七九円
昭和四二年九月八日愛知日産自動車株式会社岡崎支店(現在は愛知東日産モーター株式会社岡崎営業所)に対し譲渡(下取)したブルーバードDP四一一W型にかかる売却損であり、その計算明細は次のとおりである。
(計算明細)
(一) 売却(下取)価額 三五万五、〇〇〇円
(二) 取得時期 昭四一、九、三〇
(三) 取得価額 六六万円
(四) 昭和四一年中の減価償却額 三万二、八六八円
(五) 昭和四二年中の減価償却額 七万三、九五三円
(減価償却額の計算は前記二の(七)参照。)
(六) 差引売却損((三)-(四)-(五)-(一)) 一九万八、一七九円
(原告)
被告の主張に対する認否および主張
一 被告の主張一は争う。
原告の本件係争各年分における総所得金額は、別表二「総所得金額計算表」の「原告主張額」欄記載のとおり、昭和四二年分は一四五万三、五〇五円、昭和四三年分は一五九万一、二〇六円である。
二(一) 同二(営業所得金額)の(一)は争う。
本件係争各年分における営業所得金額およびその内訳は別表三「営業所得金額計算表」の「原告主張額」欄に記載のとおりである。
別表四「総収入金額の明細」につき、不動産売買に関する収入金額中、昭和四二年分番号1.2.3.4.5.6.10.11.12.15.の各物件に関する分、昭和四三年分番号7.10.11.12.14.15.16.17.の各物件に関する分ならびに昭和四二、四三年分の貸金利息等に関する収入金額が被告主張額のとおりであることは認めるが、その余はいずれも否認する。
不動産売買に関する収入金額中、昭和四二年分番号7の物件の譲渡先(収入先)は訴外木村宏一であり、その収入金額は二〇五万円である。
同年分番号8の物件の譲渡先は訴外藤岡保および訴外森仁平であり、その収入金額は七〇万八、〇〇〇円である。
同年分番号13の物件の譲渡先は訴外藤岡保であり、その収入金額は三八万円である。
同年分番号14の物件の譲渡先は訴外藤岡保および訴外森仁平であり、その収入金額は四五万六、〇〇〇円である。
昭和四三年分番号1ないし6の物件の譲渡先は訴外藤岡保および訴外森仁平であり、その収入金額は被告主張の四二〇万円でなく二二六万四、〇〇〇円である。
同年分番号8の物件の収入金額は三八〇万円である。
同年分番号9.10の物件の譲渡先は訴外内田義人であり、番号9の収入金額は三二六万〇、六〇〇円である。
同年分番号13の物件の収入金額は九九万七、四一〇円である。
(二) 同二の(二)(売上原価)は番号16は認め、その余は争う。
不動産売買に関する売上売価およびその内訳は次のとおりである。
1. 昭和四二年分
(1) 番号1.2の物件の取得価額、登録税・登記手数料(以下「登録税等」という。)が被告主張額であることは認めるが、その外に、原告は、訴外杉山幸夫測量士に対し測量費七、〇〇〇円、代書費用八、〇〇〇円、訴外西山弘に対し明渡の世話代五万円、訴外中井与祐に対し仲介料四万五、〇〇〇円をそれぞれ支払っている。
従って、右物件の売上原価は七八万三、一九〇円である。
(2) 番号3の物件の取得価額、登録税等が被告主張額のとおりであることは認めるが、その外に原告は代書費用として三、〇〇〇円を支出している。なお、所有権移転登記手続について代書費用を支払うことは当然の事柄であり、これにについて領収証がなくても、売上原価に算入すべきである。
従って、右物件の売上原価は四〇万三、八四〇円である。
(3) 番号4の物件の売上原価は二九七万一、三二〇円であり、その内訳は次のとおりである。
イ 取得価額 二五〇万九、二一五円
ロ 登録税額 一二万九、八七五円
ハ 代書費用 一、八三〇円
ニ 不動産取得税(被告主張額) 三万〇、四〇〇円
ホ 整地・立退・移転費用 三〇万円
(訴外酒井勝尚に対する分二〇万円(被告主張額) 訴外西山弘・木戸田正に対する分一〇万円)
(4) 番号5の物件の売上原価は、被告主張額に代書費用二、〇〇〇円を加えた一二二万〇、七四九円である。
(5) 番号6の物件の売上原価は一二三万九、〇〇〇円であり、その内訳は取得価額一一三万五、〇〇〇円、代書費用四、〇〇〇円、訴外藤岡保に対する明渡世話料一〇万円である。
(6) 番号7の物件の売上原価は被告主張額に訴外木村完一に対する明渡料二〇万円を加えた一八五万七、〇二〇円であるる。
(7) 番号8の物件の売上原価は被告主張額に、訴外杉山幸夫に対する測量費一万八、〇〇〇円、訴外岩本猪重に対する明渡代一〇万円を加えた五四万二、六四五円である。
(8) 番号9の物件の取得価額は五三万三、〇〇〇円である。
(9) 番号10の物件の売上原価は被告主張額に、代書費用三、〇〇〇円、訴外西山弘に対する明渡世話代一二万円を加えた二一五万七、〇〇〇円である。
(10) 番号11.12の物件の売上原価は被告主張額に、訴外西山弘に対する明渡世話料一五万円、訴外山田晴久に対する本登記協力費五万円を加えた一一〇万一、〇三〇円である。
(11) 番号13ないし15の物件の売上原価は四九万七、五八三円であり、その内訳は次のとおりである。
イ 取得価額(被告主張額) 二六万九、八八四円
ロ 登録税等 一万三、六〇四円
ハ 測量費 一万七、〇〇〇円
ニ 代書費用 六、〇〇〇円
ホ 不動産取得税(被告主張額) 一、〇九五円
ヘ 整地工事費用(被告主張額) 九万円
ト 通行許可費(鈴木千年に支払ったもの) 五万円
チ 謝礼(西山弘に支払ったもの) 五万円
2. 昭和四三年分
(1) 番号1ないし6の物件の売上原価は一五五万六、六〇〇円であり、その内訳は次のとおりである。
イ 取得価額(被告主張額) 七一万五、〇〇〇円
ロ 登録税等 六万〇、二五六円
ハ 測量費 三万円
ニ 不動産取得税(被告主張額) 一万二、三四四円
ホ 整地・立退・移転費用 七三万九、〇〇〇円
(2) 番号7の物件の売上原価は被告主張額に不動産取得税一万一、二八〇円、訴外岩本猪重に対する世話代一〇万円を加えた一三〇万四、五〇五円である。
(3) 番号8の物件の売上原価は被告主張額に訴外内田義人に対する支払分五〇万円、執行官に支払った執行費用七、〇〇〇円、訴外西山弘に対する支払分一万二、〇〇〇円を加えた二九九万二、一一五円である。
(4) 番号9.10の物件の売上原価は四六〇万二、一一〇円であり、その内訳は次のとおりである。
イ 取得価額(被告主張額) 三八〇万円
ロ 登録税等(被告主張額) 一三万三、五三〇円
ハ 代書費用 一万七、四八〇円
ニ 不動産取得税(被告主張額) 七万九、一〇〇円
ホ 明渡費用
訴外永井糸子に対する分(被告主張額) 六万円
訴外黒田鐐三に対する分 三一万二、〇〇〇円
(内一万二、〇〇〇円は被告主張額)
訴外内田義人に対する分(明渡世話料) 二〇万円
(5) 番号11の物件の売上原価は被告主張額に測量費七、三〇〇円を加えた一六〇万八、三五五円である。
(6) 番号12の物件の売上原価は、被告主張額に分筆登記料として永江測量に支払った七、〇〇〇円を加えた二八万四、一八三円である。
(7) 番号13.14の物件の売上原価は二一五万八、三二一円であり、その内訳は次のとおりである。
イ 取得価額(被告主張額) 一七二万二、〇〇〇円
ロ 登録税等 一一万三、三二九円
ハ 不動産取得税 六万七、九九二円
ニ 訴外西山弘に対する明渡世話料 五万円
ホ 放棄競売保証金(被告主張額) 二〇万五、〇〇〇円
(8) 番号15の物件の売上原価は、被告主張額に訴外岡本泰治に対する支払分一〇万円、訴外内田義人に対する支払分三七万七、〇〇〇円、執行官に対する執行費用七、〇〇〇円を加えた一四八万一、一七〇円である。
(9) 番号16の物件の売上原価は被告主張のとおりである。
(10) 番号17の物件の売上原価は五一万三、三〇〇円であり、その内訳は次のとおりである。
イ 取得価額 四六万円
ロ 登録税法(被告主張額) 一、七〇〇円
ハ 測量費、代書費用 二万四、〇〇〇円
ニ 仲介料(中井不動産に対する分) 二万七、六〇〇円
(三) 同二の(三)(租税公課)は争う。
租税公課は昭和四二年分一万〇、五〇〇円、昭和四三年分六万三、二一九円(内訳、自動車税一万二、〇〇〇円、固定資産税五万一、二一九円)である。
(四) 同二の(四)(通信費)は争う。
通信費は昭和四二年分一八万三、二四〇円、昭和四三年分二〇万一、一六三円である。
(五) 同二の(五)(修繕費)は争う。
修繕費は昭和四二年分一五万〇、五〇〇円(内訳、車検代、被告主張額一、五〇〇円、自動車の修繕代八万七、〇〇〇円、オイル代一万二、〇〇〇円、その他五万円)、昭和四三年分一四万二、五〇〇円(内訳、車検代一、五〇〇円、自動車の修繕代七万四、〇〇〇円、オイル代一万四、〇〇〇円、ワックス代三、〇〇〇円、その他五万円)である。
(六) 同二の(六)(消耗品費)は争う。
消耗品費(ガソリン代)は昭和四二年分二〇万四、〇〇〇円、昭和四三年分二一万七、〇〇〇円である。
(七) 同二の(七)(減価償却費)は争う。
減価償却費は昭和四二年分二〇万七、三四二円、昭和四三年分二一万三、〇六〇円である。
(八) 同二の(八)(利子割引料)は争う。
利子割引料は昭和四二年分三万二、四〇〇円、昭和四三年分七万二、〇〇〇円である。
(九) 同二の(九)(損害保険料)は争う。
損害保険料は昭和四二年分一万五、五一〇円、昭和四三年分一万七、二三〇円である。
(一〇) 同二の(一〇)(雑費)は争う。
雑費は昭和四二年分五八万三、五八九円(内訳、競売代金、遅延費用被告主張額四万三、五八九円、調査交際連絡委託等三六万円、法務局関係一八万円)、昭和四三年分七八万三、五一八円(内訳、競売代金遅延費用被告主張額一、三四八円、貸金収入に要した費用二四万二、一七〇円、調査依頼打合せ等費用三六万円、法務局関係一八万円)である。
(一一) 同二の(一一)(競売保証金放棄損失)は認める。
(一二) 同二の(一二)(販売手数料)のうち昭和四二年分は認める。
昭和四三年分は争う。同年分の販売手数料は被告主張額に五万円を加えた八五万円である。
三 同三(農業所得金額)は争う。
本件係争各年分における耕作面積は田一、五一二平方メートルであって、収入金額は各四万五、〇〇〇円である。そして特別経費として耕運機の償却費・修繕費各三万円を要したから、本件係争各年分の農業所得金額は各一万五、〇〇〇円である。
(被告)
原告の主張に対する反論
一 不動産売買に関する収入金額について
(一) 昭和四二年分番号7の物件の買受名義人は訴外早川千枝子(実際の買主は訴外加藤義隆)であり、買受人を木村宏一、売買代価を二〇五万円とする売買契約書(甲第四号証)は真正に作成されたものではない。
(二) 同年分番号8の物件の売買は訴外徳本忠夫の代理人中井良成と原告との間で原告が競落した物件を訴外徳本が買戻すためなされたものであり、買受人を岩本猪重、売買代価を一二〇万円とする売買契約書(甲第五号証)はねつ造されたものである。
(三) 原告が昭和四二年分番号9.13.14.の各物件および昭和四三年分番号1ないし6の物件を売却するについて、訴外藤岡保、同森仁平は仲介にすぎず、買受人を右両名、売買代価を各原告主張額とする売買契約書(甲第六号証の二、同第九号証の一、同第一〇号証、同第一一号証)はいずれもねつ造されたものである。
(四) 昭和四三年分番号9の物件の買受人、収入金額は被告主張のとおりであって、原告の主張は事実に反するものである。
二 不動産売買に関する売上原価について
(一) 代書費用について
1. 昭和四二年分の番号4.5.7.8.13の各物件および昭和四三年分の番号1ないし16の各物件は、競落によって取得したものであり、競落物件についての所有権移転登記は裁判所の嘱託によって行われる(競売法三三条)のであるから、これらの物件に係る代書費用は不要である。
従って、これらについての原告の主張が事実に反することは明白である。
2. また、被告は、競落以外の原因によって取得した物件のうち昭和四二年分の番号10以外のものについては、取得の際の代書費用を、売上原価中の「登録税、登記手数料等」に含めて、計上している。すなわち、右の項目の中には、単に登録税(昭和四二年八月一日以後受付の登記については登録免許税)のみならず、原告が当該物件を取得した際の代書費用その他の手数料、印紙代が含まれている。これを原告が代書費用を主張している各物件について具体的に述べれば、次のようになる。
(1) 昭和四二年分の番号1.2について
右物件についての「登録税、登記手数料等」として被告が計上した、一、一九〇円の中には、登録税一二〇円、代書費用五五〇円が含まれている。
すなわち、原告は、右物件取得の際、所有権移転請求権仮登記手続を経ているが、この二個の物件にかかる登録税額は、登録税法(昭和四一年法三改正、以下「法」という。)二条一項一八号の規定によれば不動産一個につき六〇円であるから、合計一二〇円となる。
また、代書費用については、乙第七八号証(登記申請書欄の六「抹消その他の登記」による。)によれば一件につき五〇〇円で不動産が一個増すごとに五〇円加算されるから、二個で一件の場合は五五〇円である。
(2) 昭和四二年分の番号3について
右物件についての「登録税、登記手数料等」として被告が計上した八四〇円の中には、登録税三〇円、代書費用五〇〇円が含まれている。
右物件取得の際、原告が行ったのは、仮登記についての付記登記手続であり、これに係る登録税は、法二条一項一九号の規定によれば、不動産一個につき三〇円であるところ、右物件は一個であるから三〇円である。
また、代書費用は、乙第七八号証によれば一件五〇〇円であり、右物件は一個であるから五〇〇円である。
(3) 昭和四二年分の番号6および9について
被告は、右物件についての代書費用もすでに経費として認めている。
(4) 昭和四三年分の番号17について
右物件についての被告主張額一、七〇〇円の中には、登録税五〇〇円、代書費用八五〇円が含まれている。
すなわち、昭和四三年二月七日付所有権移転登記がなされた際の右物件二筆の不動産価額は七、〇〇〇円であり(国税通則法一一八条一項)、算出登録免許税額は、登録免許税法第九条、別表第一及び第一九条の規定によれば、五〇〇円であるから、原告が昭和四一年に右物件を取得し所有権移転登記手続をした際の登録税額は、当時の不動産価額が七、〇〇〇円以下と考えられること、および法二条一項三号所定の税率に照らせば、五〇〇円を上回らないことは明らかである。
また、代書費用については、所有権移転登記申請一件は八〇〇円で不動産一個増すごとに五〇円加算されるから、右物件については八五〇円となる。
3. 昭和四二年分の番号10の物件については、中間省略登記によっているため、原告は同人名義への所有権移転登記手続を経ていない。
従って、右物件につき代書費用を負担したとの原告の主張が事実に反することは明らかである。
なお、原告は、原告が登記義務者である場合にも代書費用を負担した旨主張しているとも考えられるが、領収書等の証拠もなくこれを認めることはできない。
(二) 訴外西山弘に対する明渡世話料等について
訴外西山弘が原告のなす取引に関与したのは、昭和四二年分番号8.昭和四三年分番号7.8の各物件に関してのみであって、右三件以外に、訴外西山弘に明渡世話料等を支払ったとする原告の主張は理由がない。
その他、原告は、本件各売却物件の売上原価につき被告主張額を超える経費を要した旨主張しているが、いずれも事実に反するものである。そして右主張を裏付けるべく提出された甲号証(領収証等)はいずれも成立は真正でなく、内容は虚偽である。
三 その他の必要経費についても、原告の主張を裏付ける証拠は全くなく、いずれも理由がない。
第三証拠
(原告)
一 甲第一号証の一・二、第二ないし第五号証、第六号証の一・二、第七号証、第八、第九号証の各一ないし三、第一〇ないし第一二号証、第一四号証、第一五号証の一ないし四、第一六号証、第一七号証の一・二、第一八号証の一ないし三、第一九ないし第二五号証、第二六号証の一・二、第二七号証、第二八号証の一・二、第二九号証の一ないし三、第三〇、第三一号証を提出し(第一三号証は欠番)、証人藤岡保・同西山弘・同内田連治の各証言および原告本人尋問の結果を採用した。
二 乙第二九号証、第四八号証の一ないし三、第四九ないし第五一号証、第五二号証の二・三、第五三ないし第六〇号証、第六六ないし第六九号証、第七〇号証の一ないし三、第七一号証の一・二、第七二、第七三号証、第七六号証の一ないし三の原本の存在と成立は認める、第一号証、第三号証、第八ないし第一〇号証、第一八号証、第一九号証の一・二、第三〇、第三一号証、第三三ないし第四七号証、第五二号証の一、第六一ないし第六五号証、第七七号証の一ないし五、第一〇五ないし第一二二号証、第一二九、第一三〇号証、第一三二ないし第一四〇号証、第一四三号証の一・二、第一四六ないし第一四九号証、第一五一、第一五二号証、第一五三号証の一・二、第一五四号証、第一五七号証の二の成立は認める、その乙号各証の成立は不知、と述べた。
(被告)
一 乙第一ないし第一〇号証、第一一号証の一ないし三、第一二ないし第一八号証、第一九号証の一・二、第二〇ないし第四七号証、第四八号証の一ないし三、第四九ないし第五一号証、第五二号証の一ないし三、第五三ないし第六九号証、第七〇号証の一ないし三、第七一号証の一・二、第七二ないし第七五号証、第七六号証の一ないし三、第七七号証の一ないし五、第七八、第七九号証、第八〇号証の一・二、第八一、第八二号証、第八三号証の一・二、第八四、第八五号証、第八六ないし第一〇〇号証の各一・二、第一〇一ないし第一四二号証、第一四三号証の一・二、第一〇一ないし第一四二号証、第一四三号証の一・二、第一四四ないし第一五二号証、第一五三号証の一・二、第一五四、第一五六号証、第一五七号証の一・二を提出し(第一五五号証は欠番)、証人斉藤次夫・同伊藤清・同森茂伸(第一、二回)・同大山義隆の各証言を援用した。
二 甲第二〇ないし第二五号証、第三一号証の成立は認める、その余の甲号各証の成立は不知、と述べた。
理由
第一本件課税処分等の経緯について
請求原因ないし四の事実(本件課税処分等の経緯)は当事者間に争いがない。
第二本件課税処分の適法性について
一 原告が本件係争年当時、不動産売買業、貸金業および農業を営んでいたものであることは当事者間に争いがない。
そして、証人斉藤次夫の証言および原告本人尋問の結果によれば、右不動産売買業は、裁判所における競売にかかる競落物件の転売による不動産取引を主な内容とするものであることが認められる。
二 営業所得金額について
(総収入金額)
(一) 不動産売買に関する収入金額
1 別表四「総収入金額の明細」記載の不動産売買に関する収入金額中、昭和四二年分番号1.2.3.4.5.6.10.11.12.15.の各物件に関する分、昭和四三年分番号7.10.11.12.14.15.16.17の各物件に関する分については、当事者間に争いがない。
2 昭和四二年分番号7の物件について
成立に争いのない乙第三五、第一〇九号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した取引別収入メモの謄本)および証人森茂伸の証言(第一回)により成立の認められる乙第二〇号証によれば、原告は、訴外加藤義輝が所有し、現に居住していた右物件を昭和四二年九月六日代金一六〇万二、〇〇〇円で競落し、そのころ右物件を訴外加藤の要請により代金一六〇万円、他に裏金六〇万円合計二二〇万円で右訴外人に売却した(但し買受名義人は、草川千枝子)ことが認められる。
原告は、右物件の売却先は訴外木村完一であり、その売却代金は二〇五万円である旨主張し、甲第四号証および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するけれども、原告の右主張を裏付ける重要な証拠ともいうべき甲第四号証は本件課税処分の調査時、異議申立および審査請求の審理過程において原告より提示はなく(この点は弁論の全趣旨により認める。)、本訴提起後三年以上を経過した昭和五一年一月二六日(第二〇回口頭弁論期日)に至つて提出されていること、前掲乙第一〇九号証には、原告の右主張に副う記載はなく、売却先として「早川千枝子」「加藤義輝」と記載されていること、および前掲乙第二〇号証に照らすと、甲第四号証の記載内容および原告本人の前記尋問結果部分は措信し難い。
他に前記認定を左右すべき証拠はない。
3 昭和四二年分番号8の物件について
成立に争いのない乙第四四号証、証人森茂伸の証言(第一回)により成立の認められる乙第三二号証によれば、右物件は、元訴外徳本忠夫の所有であったが、原告が昭和四二年三月二日四〇万円で競落し、四二年中に訴外中井良成の仲介により右物件を訴外徳本に代金一三五万円で売戻したことが認められる。
原告は、右物件の売却先は訴外岩本猪重であり、その売却代金は一二〇万円である旨主張し、甲第五号証および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存ずるけれども、右甲第五号証は本訴提起後三年以上経過して提出されたものであり、しかも原告本人尋問の結果によれば、同号証の買主欄に記載されている岩本の住所、氏名は原告が記載したものであること、訴外岩本は、いわゆる競落物件のブローカであることが認められること、および前掲乙第三二号証に照らすと、右甲第五号証の成立の真正およびその記載内容、原告本人の前記尋問結果部分はいずれもたやすく措信し難い。
他に前記認定を左右すべき証拠はない。
4 昭和四二年分番号9の物件について
証人伊藤清の証言により成立の認められる乙第一一号証の一ないし三、証人森茂伸の証言(第一回)により成立の認められる乙第一七号証によれば、原告は、昭和四二年六月頃右物件を訴外森仁平および訴外藤岡保の仲介により訴外山田文子に七六万〇、五〇〇円で売却したことが認められる。
原告は、右物件の売却先は訴外藤岡保および訴外森仁平であり、その売却代金は七〇万八、〇〇〇円である旨主張し、前掲乙第一一号証の二・三(山田文子宛の領収証)によれば、右領収書は訴外森仁平名義で作成されていることが認められるが、前掲乙第一一号証の一および前掲乙第一七号証によれば、右森仁平らは、右売買における仲介にすぎないことが認められるから、右領収書の作成名義人が訴外森仁平であるとの一事から右物件の買受人が訴外森仁平であると即断することはできない。
もっとも、甲第六号証の二中には、「原告は、右物件を訴外藤岡保に七〇万八、〇〇〇円で売渡す」旨の記載があり、証人藤岡保の証言、原告本人尋問の結果中には、右記載に副う部分が存するけれども、前記のとおり訴外藤岡保および訴外森仁平は、右物件の取引につき仲介人にすぎないこと、同号証は本訴提起後三年以上経過して提出されたものであり、しかも原告は、訴外藤岡保、訴外森仁平の両名に売却したと主張しているにもかかわらず、同号証には買主として訴外森仁平の記載がないことからして、右甲第六号証の二の記載内容はたやすく措信し難く、証人藤岡保の証言および原告本人尋問の結果部分も措信できない。
他に前記認定を左右すべき証拠はない。
5 昭和四二年分番号13.14の物件について
前掲乙第一七号証、成立に争いのない乙第一三六、第一三七号証によれば、原告は、昭和四二年分番号13の物件を、訴外藤岡保、同川合某の仲介で訴外大山孝春に坪当り六、〇〇〇円、二八一平方米(八五坪)として五一万円で売却したことが認められる。
もっとも、前掲乙第一三七号証によれば、売買契約書上、売買代金額は三八万円と記載されていることが認められるが、証人森茂伸の証言(第一回)により成立の認められる乙第一六、第二一、第二二、第二三号証、証人大山義隆の証言により成立の認められる乙第一二六号証によれば、原告は、若干の不動産取引につき、正式の契約書には実際の売買価額より低額の価額を記載し、その余の裏金として授受していた形跡のあることが看取できるから、右乙第一三七号証の売買代価部分はいわゆる表金であると認められ、同号証は、前示認定を左右するに足りる証拠とはなし難い。
原告は、昭和四二年分番号13の物件は訴外藤岡保に三八万円で売却したものである旨主張し、甲第九号の一、証人藤岡保の証言および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、成立に争いのない乙第一一三号証(原告が名古屋国税不服審判所に対し提出した取引別収支メモの謄本)には、売却分は「大山孝春」と記載されていること、前掲乙第一七号証によれば訴外藤岡保は本件取引について仲介人にすぎないことが認められること、右甲第九号証の一は本訴提起後三年以上経過して提出されたものであること、ならびに前掲乙第一七号証、同第一三七号証に照らすと、右甲第九号証の一の記載内容、証人藤岡保の証言および原告本人の前記尋問結果部分はたやすく、措信し難い。
他に前記認定を左右すべき証拠はない。
前掲乙第一七号証、成立に争いのない乙第一二九号、第一三〇号証、証人森茂伸の証言(第一回)により成立の認められる乙第二五号証、証人大山義隆の証言により成立の認められる乙第一三一号証によれば、昭和四一年一月一二日ごろ原告は訴外藤岡保、同森仁平の仲介により訴外丸田清に対し昭和四二年分番号14の物件を坪当り六、〇〇〇円、一一四坪として六八万四、〇〇〇円で売却したことが認められる。
原告は、右物件を訴外藤岡保および訴外森仁平に四五万六、〇〇〇円で売却した旨主張し、甲第一〇号証、証人藤岡保の証言および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、前掲乙第一七号証、同第一三一号証および証人藤岡保の証言(但し一部)によれば訴外藤岡保および訴外森仁平は、右物件の売買につき仲介人にすぎず、売買代金は、買主訴外丸田から直接原告に支払われたこと、および右両名は訴外丸田から各一万円を仲介料として受領していることが認められること、加えて、右甲第一〇号証は本訴提起後三年以上経過して提出されたものであり、しかも同号証中の買主欄に記載されている「森仁平」の筆跡は、前掲乙第一七号証中の訴外森仁平の署名と異なり、名下の印影も前掲乙第一一号証の二・三、同第一七号証における森仁平の印影と異なること、同号証中買主欄の記名はすべて原告の筆跡によるものであることが看取されること、以上、諸事実からすれば右甲第一〇号証は、後日ねつ造された疑いが濃厚であり、その記載内容ならびに右記載に副う証人藤岡保の証言、原告本人尋問の結果部分は、たやすく措信し難い。
他に前記認定を左右すべき証拠はない。
6 昭和四三年分番号1ないし6の物件について
前掲乙第一六、第一七号証、証人森茂伸の証言(第一回)により成立の認められる乙第一二、第一三、第二六号証によれば、原告は、昭和四三年六月頃訴外藤岡保、同森仁平の仲介により、坪当り一万五、〇〇〇円で、昭和四三年分番号1の物件を訴外若杉七郎に、同年分番号2の物件を訴外保坂幸次に各七五万円、合計一五〇万円で、同年八月頃同年分番号3の物件を訴外伊藤龍也に、同年分番号4の物件を訴外伊藤宏隆に合計一五〇万円で(乙第一六号証添付領収書は表金一三四万五、〇〇〇円、他に裏金として一五万五、〇〇〇円)同年五月頃同年分番号5の物件を訴外辰己則正に、同年分番号6の物件を訴外伊藤義秋に各六〇万円でそれぞれ売却したことが認められる。
原告は、右昭和四三年分番号1ないし6の物件は訴外藤岡保および訴外森仁平に対し、二二六万四、〇〇〇円で売却した旨主張し、甲第一一号証、証人藤岡保の証言および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、成立に争いのない乙第一一四ないし第一一九号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した取引別収支メモの謄本)には、右物件の売渡先は前記認定のとおり記載されていること、訴外藤岡保および訴外森仁平は前記認定のとおり右各取引につき仲介人にすぎないこと、甲第一一号証は本訴提起後三年以上経過して提出されたものであり、しかも同号証の買主欄に記載されている「森仁平」の筆跡および名下の印影は前掲乙第一一号証の二・三、第一七号証と対照すると訴外森仁平の筆跡・印影と異なり、ねつ造された疑いが濃厚であると認められること等に照らすと、甲第一一号証の記載内容ならびに前記証人藤岡保の証言および原告本人尋問の結果部分は措信し難く、前掲乙第一一四号証ないし第一一九号証も前記認定を覆すに足らず、他に前記認定を左右すべき証拠はない。
7 昭和四三年分番号8の物件について
前掲乙第二一号証によれば、原告は右物件を、昭和四三年中に訴外浅見兼松に対し三九二万万円(二八〇万円は表金、一一二万円は裏金)で売却したことが認められる。
原告は、右物件の売却代金は三八〇万円である旨主張し、原告本人尋問の結果中には右主張に副う部分があるが、右尋問結果部分は乙第二一号証に照らして措信し難い。
他に前記認定を左右すべき証拠はない。
8 昭和四三年分番号9の物件について
成立に争いのない乙第一二一号証、前掲乙第二二号証、同第一二六号証によれば、原告は、右物件を訴外梅田不動産の仲介により昭和四三年七月頃訴外村木次郎に坪当り九万円で四八九万〇、六〇〇円(表金坪当り六万円として三二六万〇、四〇〇円、裏金坪当り三万円として一六三万〇、二〇〇円)で売却したことが認められる。
しかし、証人内田連治の証言、原告本人尋問の結果、これらにより成立を認めうる甲第一五号証の一・三、第三〇号証によれば原告は、自ら競落した昭和四三年分番号9.10の土地合計約八〇坪を、同年分番号9の土地上の家屋占拠者を立退かせて、引渡すこと、もし約定期日までに引渡のできないときは手付倍返しの約定で昭和四二年一一月一五日ごろ競落物件の転売を主たる仕事とする不動産業訴外内田義人こと内田連治に代金四八〇万円(坪当り六万円)で売渡す旨の契約を締結し、右内田より手付金として六〇万円を受領し、その旨の契約書(甲第三〇号証)を作成したが、約定の期日までに引渡しができなかったところ、原告は訴外内田と交渉の末、昭和四三年三月一三日ごろ、訴外内田との間に、原告が前記契約条項により手付金六〇万円の倍額を訴外内田に支払うべき債務を免れる代りに、その後、売買目的物件を他に売却できたときは、右売却代金中坪当り六万円を超える分を訴外内田に支払う旨の合意が成立し、その旨の誓約書(甲第一五号証の三)が作成された。そして、原告が昭和四三年分番号9の土地家屋を前記のとおり訴外村木に売却したとき、右売却代金四八九万〇、六〇〇円中表金坪当り六万円として三二六万〇、四〇〇円を超える裏金の中から、右誓約書に基づき一六二万円(三万円×五四(坪))を訴外内田に支払った以上の事実が認められ、右事実によれば、原告は、本件物件の売却代金の中から、訴外内田に対する約定損害賠償金として一六二万円を支払ったというのであるから、番号9の物件売却により、原告が実質的に収入した金額は三二七万〇、六〇〇円ということになる。
もっとも、(イ)前掲甲第一五号証の一・三、第三〇号証が、本訴提起後に提出されたものであること、(ロ)六〇万円の手付倍返しの約定債務の履行に代えて一六二万円の損害賠償金を支払ったことは均衡を失すると考えられること、(ハ)損害賠償の約定当時は、もっと高額の賠償金の支払が計算上予想されていたことが証人内田連治の証言から窺知できることなどのことは、前記認定に消長を及ぼすものと考えられなくもないが、証人内田連治の証言及び原告本人尋問の結果により、右甲号各証の成立の真正が認められることと、競落物件の売買を業とする同業者間における競落物件の売買契約不履行における損害賠償の約定としては、前記約定は著しく均衡を失する不合理なものとは考えられないこと等の諸点を勘按すると、前記(イ)(ロ)(ハ)の諸点は、前記認定を左右するに足りるものとはなし難く他に右認定を左右するに足りる証拠は存しない。
してみると、右物件の収入金額は、三二七万〇、六〇〇円と認められる。
9 昭和四三年分番号13の物件について
証人伊藤清の証言により成立の認められる乙第四号証によれば、右物件の売却金額は九九万一、四七〇円であることが認められ、これに反する証拠はない。
10 以上1ないし9によれば、不動産売買に関する収入金額は、昭和四二年分一、七二五万四、二〇〇円、昭和四三年分二、三五八万四、一〇〇円となる。
(二) 貸金利息等に関する収入金額
貸金利息等の収入金額は、昭和四二年分三四万九、二六三円(内訳、訴外大岩初治分三一万六、〇五三円、訴外磯谷善光分三万三、二一〇円)、昭和四三年分八五万一、四八〇円(内訳、訴外大岩初治分二一万九、〇一四円、訴外宮戸辰男分六三万二、四六六円)であることは当事者間に争いがない。
(三) 以上(一)、(二)によれば、昭和四二年分総収入金額は一、七六〇万三、四六三円、昭和四三年分総収入金額は二、四四三万五、五八〇円となる。
(必要経費)
(一) 不動産売買に関する売上原価
(昭和四二年分)
1 番号1.2の物件について
右物件の取得価額(六七万二、〇〇〇円)と登録税等(一、一九〇円)については当事者間に争いがない。
原告は、右の外に、測量費七、〇〇〇円、代書費用八、〇〇〇円、訴外西山弘に対する明渡の世話代として五万円、訴外中井与祐に対し仲介料として四万五、〇〇〇円を出捐した旨主張するので検討する。
まず、原告本人尋問結果中には、訴外杉山幸夫に測量費として七、〇〇〇円を支払った旨の供述部分が存するが、成立に争いのない乙第一〇五、第一〇六号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した収支メモの謄本)には、右供述部分に副う記載のないことが認められることからして原告本人尋問結果中の右供述部分は、たやすく措信し難く、他に原告が右主張にかかる測量費を出捐したことを裏付けるに足りる証拠はない。
また、原告本人尋問の結果中には、代書費用として八、〇〇〇円を出捐した旨の供述部分が存するが、右供述部分を裏付けるに足りる証拠はない。
却って、成立に争いのない乙第一五三号証の一・二によれば、原告は、標記の物件取得の際、所有権移転請求権仮登記手続を経ていることが認められるところ、登録税法(昭和四一年法三改正)二条一項一八号によれば、登録税額は不動産一個につき六〇円であるから、右各物件((二個)の登録税額は一二〇円となる。
また、証人大山義隆の証言により成立の認められる乙第七八号証によれば、司法書士の報酬規定上仮登記申請は、「登記抹消その他の登記」にあたり、その代書費用は一件につき五〇〇円で不動産が一個増すごとに五〇円加算されることになっていることが認められるから、本物件の場合は五五〇円となる。
そうすると、右登録税一二〇円および代書費用五五〇円は前記争いのない登録税等一、一九〇円の中に含まれているものと認められる。
従って、原告本人尋問の結果中の右供述部分は、たやすく信用し難く、原告の代書費用に関する主張は理由がない。
甲第一号証の一(原告宛の領収証)には訴外中井与祐は昭和四〇年五月一八日に仲介手数料として四万五、〇〇〇円を領収した旨の、同第一号証の二(右同)には、訴外西山弘は昭和四二年一一月二八日に世話賃として五万円を領収した旨の各記載がなされたおり、証人西山弘の証言、原告本人尋問の結果中には、右記載に副う部分が存するけれども、(イ)前掲乙第一〇五、第一〇六号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した収支メモの謄本)には、右書証の記載内容等に符合する事実につき記載されていないことが認められること、(ロ)右甲号各証は、本訴提起後三年以上経過して提出されたものであること、(ハ)証人伊藤清の証言により、成立を認めうる乙第二号証によれば訴外水野さわは昭和四二年一〇月ごろ番号2の物件を原告から買い受けたが、仲介手数料は支払っていないことが認められ、仮に訴外西山が右物件につき仲介したとすれば、売買当事者の一方である原告からのみ世話賃名義で四万五、〇〇〇円(売買価格の約一割)の支払を受けたというのは不自然であると考えられること、右(イ)(ロ)(ハ)の事実からすれば、証人大山義隆の証言により成立の認められる乙第一〇四号証中「原告の不動産取引につき訴外西山弘が関与したものは、昭和四二年分番号8.昭和四三年分番号7.8.の各物件の取引のみである」との訴外西山の名古屋国税不服審判所係官に対する供述部分は真実であると推認できることからして右甲第一号証の二の記載内容、証人西山弘の前記証言部分および原告本人尋問の結果部分は措信し難い。
なお甲第一号証の一については、前記(イ)(ロ)の事実に加えて、証人森茂伸の証言(第一回)により成立を認めうる乙第四八号証の一ないし三によれば、昭和四〇年四月九日原告は番号1.2の物件外一筆を訴外神谷義三から買い受け、同年五月一八日残代金八二万八、〇〇〇円を右訴外人から受領していること、訴外神谷は、右売却にあたり耕作権をも譲渡していること、以上の事実が認められ、右事実からすれば、原告は、右物件取得につき立退、移転等の出費は不要であったと考えられ、買主である原告のみが訴外中井に四万五、〇〇〇円の仲介手数料(弁論の全趣旨によれば、原告は右仲介手数料は立退移転費用の趣旨をも含むものとして主張していることが看取できる)を支払ったというのは不自然と考えられ、右甲一号証の一の記載内容はたやすく信用し難い。
他に原告の前記主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号1.2の物件の売上原価は六七万三、一九〇円となる。
2 番号3の物件について
右物件の取得価額(四〇万円)および登録税等(八四〇円)については当事者間に争いがない。
原告は、代書費用として三、〇〇〇円を出捐した旨主張し、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するけれども、これを裏付ける資料は存しない。
ところで、成立に争いのない乙第一五四号証によれば、原告は、右物件取得の際、所有権移転請求権保全仮登記の付記登記手続を経ていることが認められるが、登録税法二条一項一九号によれば、その登録税は三〇円であり、また前掲乙第七八号証によれば右手続に要する代書費用は五〇〇円であることが認められるから、右登録税および代書費用は前記争いのない登録税等八四〇円に含まれていることが認められる。
右のとおりであって、前記原告本人尋問の結果部分は措信し難く、他に原告の主張事実を認むべき証拠はない。
従って、標記の物件の売上原価は四〇万〇、八四〇円である。
3 番号4の物件について
右物件の不動産取得税(三万〇、四〇〇円および訴外酒井勝尚に対する移転費用(二〇万円)については当事者間に争いがない。
成立に争いのない乙第四三号証、同第一〇七号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した収支メモの謄本)によれば、右物件の取得価額は二五〇万一、〇〇〇円、登録税等は五万二、二二五円であることが認められる。
原告は、右物件の取得価額は二五〇万九、二一五円、登録税等は一二万九、八七五円である旨主張するが、右事実を認むべき証拠はない。
また、原告は、代書費用として一、八三〇円を出捐した旨主張するが、前掲乙第四三号証によれば、原告は右物件を競落により取得したものであることが認められ、競落物件についての所有権移転登記は裁判所の嘱託によって行われる(競売法三三条)のであるから、右物件について代書費用は不要であり、原告の右主張は理由がない。
さらに、原告は、訴外西山弘・同木戸田正に対し明渡しの世話代として一〇万円を出捐した旨主張し、甲第二号証、証人西山弘の証言および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、前掲乙第一〇七号証、成立に争いのない乙第六七号証によれば、原告は訴外和光不動産株式会社に対し仲介料として一〇万円を支払っていることが認められる(右一〇万円は、前記当事者間に争いのない移転費用二〇万円の中の一部)から、さらに訴外西山弘に原告主張の金員を支払う必要があるとは考えられないこと、前掲乙第一〇七号証には原告の右主張に副う記載がないこと、甲第二号証は本訴提起後三年以上経過して提出されたものであること、及び1に述べた前掲乙第一〇四号証(名古屋国税不服審判所係官に対する訴外西山の供述書)の内容からすると甲第二号証の記載内容、証人西山弘および原告本人の前記各供述部分は措信し難い。他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号4の物件の売上原価は二七八万三、六二五円となる。
4 番号5の物件について
右物件の取得価額(九四万一、〇〇〇円)、登録税等(三万一、九一九円)、不動産取得税(一万七、八三〇円)、移転費用(一二万二、〇〇〇円)および放棄競売保証金(一〇万六、〇〇〇円)については当事者間に争いがない。
原告は、右の外代書費用として二、〇〇〇円を出捐した旨主張し、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、成立に争いのない乙第三四号証によれば、右物件は競落物件であることが認められるから、3に述べたと同一の理由により代書費用は不要というべく、原告の右尋問結果部分は措信できず、その主張は理由がない。
従って、右物件の売上原価は一二一万八、七四九円である。
5 番号6の物件について
原本の存在および成立について争いのない乙第五〇号証によれば、原告は右物件と豊田市新町三丁目二八番山林一畝(以上合計二二七坪)を一一三万五、〇〇〇円(坪当り五、〇〇〇円)で取得したことが認められるので、右二二七坪の取得価額を基礎として、売却にかかる番号6の物件(一九七坪)の取得価額を按分して算出すると、被告主張のとおり九八万五、〇〇〇円となる。
前掲乙第七八号証、証人大山義隆の証言により成立の認められる乙第七九号証によれば標記の物件と豊田市新町三丁目二八番の山林一畝に関する登録税等は二、四一〇円であることが認められるから、右額を基礎として、標記の物件の登録税等を按分算出すると、被告主張のとおり二、〇九二円となる。
原告は、代書費用として四、〇〇〇円を出捐した旨主張するが、右乙第七九号証によれば、右二、〇九二円の中に原告が本件物件につき登記申請手続を委任した訴外吉橋京一に対する代書費用二、〇二〇円が含まれていることが認められるから、右主張は理由がない。
次に、原告は、訴外藤岡保に対し明渡しの世話代として一〇万円を支払った旨主張し、甲第三号証および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するけれども成立に争いのない乙第一〇八号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した収支メモの謄本)には、右主張に副う記載がないこと、右甲第三号証は本訴提起後三年以上経過して提出されたこと、証人藤岡保の証言中右甲第三号証が本物件の取引に関し作成されたものかどうかの点については、分明でないこと等からして、甲第三号証の記載内容および前記原告本人尋問の結果部分はたやすく、措信し難く、他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号6の物件の売上原価は九八万七、〇九二円である。
6 番号7の物件について
右物件の取得価額(一六〇万二、〇〇〇円)、登録税等(三万四、八三〇円)および不動産取得税(二万〇、一九〇円)については当事者間に争いがない。
原告は、訴外木村に対し明渡代として二〇万円を要した旨主張し、甲第四号証には特約として「居住者がいるため売買代金より明渡代金として二〇万円を差引く」旨の記載があり、原告本人尋問の結果中にも訴外木村完一との間で右の約定をした旨の供述部分が存する。
しかしながら、前掲乙第一〇九号証には右主張に副う記載がないこと、前記二(総収入金額)(一)2で認定したとおり本物件の実際の買主は訴外加藤義輝であり、同人はもともと本物件の元所有者で、当時右物件に居住していた占有者であるから立退料を支払う必要はないこと、および甲第四号証の記載内容は信用できないこと等からして、原告本人尋問の右結果部分はたやすく措信し難く、他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号7の物件の売上原価は一六五万七、〇二〇円である。
7 番号8の物件について
右物件の取得価額(四〇万円)、登録税等(一万五、九五五円)および不動産取得税(八、六九〇円)については当事者間に争いがない。
原告は、測量費として訴外杉山幸夫に一万八、〇〇〇円を支払った旨主張し、原告本人尋問の結果中には右主張に副う部分が存するが、これを裏付ける資料はなく措信し難い。
また、原告は、訴外岩本猪重に対し明渡代として一〇万円を支払った旨主張し、甲第五号証には特約として「居住者がいるため売買代金より右明渡代分を差引く」旨の記載があり、原告本人も右甲第五号証拠載のとおりの約定をした旨供述する。
しかしながら、前記二(総収入金額)(一)3で認定したとおり、甲第五号証の成立の真正、その内容いずれも極めて疑わしいこと、本物件の買受人は訴外徳本忠夫であり、同人はもともと本物件に居住していたのであるから立退料を支払う必要はないこと等からすると、原告本人の前記供述も措信し難い。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号8の物件の売上原価は四二万四、六四五円である。
8 番号9の物件について
成立に争いのない乙第一三八ないし第一四〇号証、証人伊藤清の証言、右証言により成立の認められる乙第七四号証によれば、原告は訴外松崎よし子より右物件を坪当り二、〇〇〇円、一一八坪合計二三万六、〇〇〇円で買受けたことが認められる。
原告は右物件を訴外松崎常雄から五三万一、〇〇〇円で買受けた旨主張し、甲第六号証の一、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するけれども、右甲第六号証の一(売買契約書)の作成日付は昭和四一年八月一〇日と記載されているところ、前掲乙第一三八ないし第一四〇号証によれば、原告が右物件につき所有権移転請求権の仮登記を経由したのは同年三月二三日であることが認められ、右甲第六号証の一は、原告の右仮登記手続以前に作成されるのが取引の通例であることに反すること、これに加えて、前掲乙第一三八ないし第一四〇号証によれば、右物件の登記簿上の前所有者名義は訴外松崎よし子であって、訴外松崎常雄ではないことが認められること、甲第六号証の一の売主欄に記載されている「松崎常雄」の住所・氏名の筆跡は原告の筆跡と同一であること等からすると、右甲第六号証の一の成立の真正は極めて疑わしく、その記載内容および原告本人の前記尋問結果部分は措信し難い。
他に前記認定を左右すべき証拠はない。
前掲乙第七八、第七九号証によれば、登録税等は二、〇六五円であることが認められ、これに反する証拠はない。
従って、番号9の物件の売上原価は二三万八、〇六五円である。
9 番号10の物件について
右物件の取得価額(二〇三万四、〇〇〇円)については当事者間に争いがない。
原告は、登録税等・代書費用として三、〇〇〇円を出捐している旨主張するが、右主張事実を認むべき裏付け証拠はなく、原告本人尋問の結果によるも右物件につき原告が仮登記を経由したかどうかの点は判然としないから、原告の右主張は理由がない。
また、原告は、訴外西山外一名に対し明渡世話代として一二万円を支払った旨主張し、甲第七号証には右主張に副う記載があるけれども、成立に争いのない乙第一一〇号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した収支メモの謄本)には右主張に副う記載がないこと、および前掲乙第一〇四号証に照らし、右甲第七号証の記載内容は措信し難く、他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号10の物件の売上原価は二〇三万四、〇〇〇円である。
10 番号11.12の物件について
右物件の取得価額(九〇万円)および登録税等(一、〇三〇円)については当事者間に争いがない。
原告は、訴外西山弘に対し、明渡世話代として一五万円を支払った旨主張し、甲第八号証の一には右主張に副う記載があるが、成立に争いのない乙第一一一、第一一二号証(原告が名古屋国税不服審判所に対し提出した収支メモの謄本)には原告の右主張に副う記載がないこと、右甲第八号証の一は本訴提起後三年以上を経過して提出されたものであること、および前掲乙第一〇四号証に照らすと、甲第八号証の一の記載内容は措信し難く、他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
また、原告は、訴外山田晴久に対し本登記協力費として五万円を支払った旨主張し、甲第八号証の二、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するけれども、前掲乙第一一一、第一一二号証には右主張に副う記載はなく、そもそも右のような費用は本来登記権利者たる本件土地の譲受人訴外山田晴久が負担すべき筋合のものであり、売主である原告が訴外山田に対し支払ういわれは毛頭存しないことに照らし、右甲第八号証の二の記載内容および右原告本人尋問の結果部分は措信し難い。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号11.12の物件の売上原価は九〇万一、〇三〇円である。
11 番号13.14.15の物件について
右物件の取得価額(二六万九、八八四円)、不動産取得税(一、〇九五円)および整地工事費用(九万円)については、当事者間に争いがない。
成立に争いのない乙第四五号証によれば、原告は競落により右物件(但し、豊田市大字越戸字神田五四番、田三三・〇五平方メートルを除く。)を含む二二筆の土地(合計二、三一八・五坪)を競落代金二三一万七、〇〇〇円で右豊田市大字越戸字神田五四番の土地を含む九筆の土地(合計三八二坪)を競落代金三八万四、〇〇〇円でそれぞれ取得したが、前者の所有権移転登録税等および郵送料等は一一万六、七〇〇円、後者のそれは、三、七七五円であったことが認められる。
しかして、右登録税等を基礎として標記の物件の登録税等を按分して算出すると、被告主張のとおりの算式により一万三、一八六円となる。
原告は、登録税等は一万三、六〇四円である旨主張するが、右主張事実を認むべき証拠はない。
また、原告は、測量費として一万七、〇〇〇円、代書費用として六、〇〇〇円を出捐した旨主張し、原告本人尋問の結果中には右主張に副う部分が存するが、これを裏付けるべき資料はなく、そもそも右物件は競落により取得したものであるから代書費用は不要というべく、原告本人の右尋問結果部分は措信し難い。他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
次に、原告は訴外鈴木千年に対し通行許可費として五万円を支払った旨主張し、甲第九号証の三(領収証)、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するけれども、右甲第九号証の三に記載されている「鈴木千年」の筆跡は、原本の存在・成立につき争いのない乙第五五号証、弁論の全趣旨により成立の認められる乙第一四一号証(訴外鈴木千年の名古屋国税局係官に対する供述聴取書)中の鈴木千年自筆にかかる暑名部分の筆跡と異なり、また右甲第九号証の三に押捺されている「鈴木」の印影も、鈴木千年使用印の印影と異なること(この点は乙第一四一号証により認める。)、成立に争いのない乙第一一三号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した収支メモの謄本)には原告の右主張に副う記載がないこと、ならびに前掲乙第一四一号証によれば、訴外鈴木は甲九号証の三につきその成立および通行料受領の事実を否定していることが認められること、以上の事実に照らすと、右甲第九号証の三の成立はもとよりその内容も措信し難く、原告本人の前記尋問結果部分も信用できない。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
さらに原告は、訴外西山弘に対し謝礼として五万円を支払った旨主張し、甲第九号証の二、証人西山弘の証言および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するけれども、前掲乙第一一三号証には右主張に副う記載がないこと、および、前掲乙第一〇四号証に照らすと、甲第九号証の二の記載内容、証人西山弘の右証言部分および原告本人の右尋問結果部分はいずれも措信し難い。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号13.14.15の物件の売上原価は三七万四、一六五円である。
(昭和四三年分)
1 番号1ないし6の物件について
右物件の不動産取得税(一万二、三四四円)については当事者間に争いがない。
成立に争いのない乙第四六号証によれば、原告は、競落により<1>番号1ないし6の物件(土地、合計九一五・八七平方メートル)を含む九三五・五〇平方メートルの土地を七一万五、〇〇〇円で、<2>豊田市大字越戸字上井畑三-一、宅地一二二・三一平方メートルを一一万九、〇〇〇円で、<1>の土地上に存する建物を七三万九、〇〇〇円で<2>の土地上に存する建物を二八万九、〇〇〇円(以上合計一八六万二、〇〇〇円)で取得したこと、右土地・建物の所有権移転登録税等(郵送料等を含む)は三万三、四三〇円であったことが認められる。
ところで、原告の売却にかかる物件(土地)は競落土地の一部であるから、その取得価額は按分計算により六九万九、九九七円(<省略>)となる。
前掲乙第一七号によれば、原告は、前記<1>の土地上に存した建物を取壊し、その古材等を取得したことが認められるところ、原告は、右古材の価額は一〇万円であるとする被告の主張を明らかに争っていないからこれを自白したものとみなす。そうすると、右建物の除去に要した費用(整地費用)は被告主張のとおり六二万五、五九二円(<省略>)となる。
次に前記登録税等を基礎として、標記物件につき計上すべき登録税等を按分算出すると、被告主張のとおり二万三、七九九円(<省略>)となる。
原告は取得価額として、七一万五、〇〇〇円、整地費用として七三万九、〇〇〇円を主張するが、本件売却にかかる土地は競落による取得土地の一部であり、また原告は古材を取得しているのであるから、競落価額に相当する右各金額全額を売上原価に計上することは相当でなく、原告の右主張は理由がない。
また、原告は、登録税等として六万〇、二五六円、測量費として三万円を出捐した旨主張するが、右主張事実を認むべき確たる証拠はない。
従って、番号1ないし6の物件の売上原価は一三六万一、七三二円となる。
2 番号7の物件について
右物件の取得価額(八七万五、〇〇〇円)、登録税等(一万八、二二五円)および移転費用(三〇万円)については当事者間に争いがない。
原告は不動産取得税として一万一、二八〇円を支払った旨主張するが、地方税法七三条の二一第一項によれば、不動産取得税の課税価格は固定資産の登録価格によることと規定されているところ、成立に争いのない乙第一四三号証の一・二によれば、右物件のうち千種区猪高町大字高針字勢子坊三〇七-二〇、山林六九四・二一平方メートルの登録価格は一万二、六〇〇円、同所三〇七-二一、山林二一一・五七平方メートルの登録価格は三、八〇〇円であることが認められ、右各価格は免税点五万円未満(地方税法七三条の一五の二第一項(但し、昭和四三年当時施行のもの)であるから、右各土地について不動産取得税が課された事実は認め難く、原告の右主張は理由がない。
次に、原告は世話代として訴外岩本猪重に対し、一〇万円を支払った旨主張し、甲第一二号証(仮領収書)および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、右領収書の「岩本猪重」の部分は原告が記載したものであり(この点は原告本人尋問の結果により認める。)、本物件の取得に関しては訴外西山弘と訴外太田晴雄が世話をしたもので同人らに三〇万円が支払われていること(この点は前掲乙第一〇四号証、原本の存在・成立につき争いのない乙第七〇号証の二、同第七一号証の一・二により認める。)、弁論の全趣旨によれば、右三〇万円が当事者間に争いのない移転費用三〇万円であると認められること、等の事実からしても、訴外岩本猪重が本物件の取得に関与したとは認め難いから、右甲第一二号証が真正に成立したものとは認め難く、その記載内容および原告本人の尋問結果部分は措信し難い。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、標記の物件の売上原価は一一九万三、二二五円である。
3 番号8の物件について
右物件の取得価額(二〇〇万一、〇〇〇円)登録税等(七万七、二二五円)、不動産取得税(四万四、八九〇円)および立退費用(訴外椰野に対する分一五万円、訴外藤原に対する分二〇万円)については当事者間に争いがない。
原告は、右の外、訴外内田義人こと内田連治に対し、五〇万円を支払った旨主張し、甲第一四号証には右主張に副う記載がある。
ところで、右甲第一四号証について、証人内田連治は「同人は、原告が右物件を競落により取得するに際して、競売物件の情報を原告に提供し、右物件を競落するように助言したこと、及びその際約二〇万円を出資し、原告の競落代金の一部に充てたこと、甲一四号証は、右情報提供の礼金および利益配当の趣旨で原告から五〇万円を受領したときの領収証である出資金三〇万円は別途に返済を受けている旨」証言している。
しかしながら、競落物件についての情報提供、助言、二〇万円の出資に対する礼金ないし利益配当として五〇万円を出資金の返済とは別に原告が支払うということは常識上考えられないこと、一方右甲第一四号証に関する原告本人尋問の結果は、次のとおり一貫性を欠いている、すなわち、原告は当初同号証は、本物件競落の際、訴外内田連治から五〇万円の出捐を受け、後にこれを返還した際の領収証であると供述していたが、その後の本人尋問においては訴外内田が出捐した五〇万円に対する利益金の分配であると述べ、さらに訴外内田から出資を受けたのは五〇万円ではなく、一五万円か二〇万円であり、利益配当分も含めて五〇万円を返済した旨供述しており、右原告本人尋問の結果と前記証人内田連治の証言を併せ考えると、甲一四号証の五〇万円の趣旨が極めて不分明であると考えざるを得ず、これに加えて成立に争いのない乙第一二〇号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した収支メモの謄本)には原告の前記主張に副う記載がないこと等からすると、甲第一四号証の記載のとおり五〇万円の授受が、仮に原告と訴外内田との間になされたとしても、右五〇万円が売上原価の一部となると断定することは到底できず、他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
次に、原告は執行官に対する執行費用七、〇〇〇円を本物件の売上原価に計上しているところ、成立に争いのない甲第二八号証の二(但し、書込部分を除く。)、弁論の全趣旨により成立を認めうる同号証中の書込み部分、成立に争いのない乙第三七号証によれば、原告は昭和四三年三月二五日本件競落物件の所有権訴外椰野友治に対する明渡強制執行のため執行官予納金として七、〇〇〇円を納入していることが認められるが、右予約金が原告に返還されたと認めるべき証拠は存しない。もっとも、訴外椰野に対し立退費用として原告が一五万円支払ったことは前記のとおりであり、原本の存在および成立に争いのない乙第五七号証によれば、同年五月四日付で原告と訴外椰野との間に明渡についての合意が成立していることが認められるから、そのころ、原告は執行申立を取下げていると推認できる。
しかし、執行申立を取下げたからといって、執行官予納金全額の還付を受けられるものとは即断できないから、右還付の事実につき、これを認めるべき証拠が存しない以上、原告が右予納金分を本件売上原価に計上したことをもって不当とはいえない。
なお、原告は訴外西山弘に対し、一万二、〇〇〇円を支払った旨主張し、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、これを裏付けるべき資料はなく、前掲乙第一〇四号証に照らしても、右尋問結果部分は措信し難い。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、標記の物件の売上原価は二四八万〇、一一五円である。
4 番号9.10の物件について
右物件の取得価額(三八〇万円)、登録税等(一三万三、五三〇円)、不動産取得税(七万九、一〇〇円)および明渡費用七万二、〇〇〇円(訴外永井糸子分六万円、訴外黒田鐐三分中一万二、〇〇〇円)については当事者間に争いがない。
弁論の全趣旨により成立の認められる甲第二六号証の一・二(但し書き込み部分を除く。)原告本人尋問の結果により成立を認めうる同号証の一・二の書き込み部分および原告本人尋問の結果によれば原告は昭和四三年六月二八日及び七月二四日に、右物件にかかる代書費用(土地測量図作成、分筆登記手続等費用)として中西司法書士事務所に対し、合計一万七、四八〇円を支払っていることが認められ、これに反する証拠はない。
原告は訴外黒田鐐三に対し、前記一万二、〇〇〇円の外、さらに三〇万円を支払っている旨主張し、甲第一五号証の二(作成日付は、昭和四三年七月二〇日)および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、右甲第一五号証の二中の「黒田鐐三」の筆跡および名下の印影は、原本の存在・成立につき争いのない乙第六〇号証中の「黒田鐐三」の筆跡および名下の印影と全く異なっていること、前掲乙第一二一号証には原告の右主張に副う記載がないこと、証人大山義隆の証言により成立の認められる乙第一二八号証によれば、訴外黒田の孫訴外黒田憲之は、名古屋国税局係官に対し、訴外黒田の引越先は、憲之兄弟がアパートを借りて右黒田に提供したのであり、訴外黒田は原告から三〇万円の立退料など受領していないと、供述していることが認められ、また、前掲乙第六〇号証によれば、昭和四三年七月五日に原告と訴外黒田との間に一万二、〇〇〇円を右黒田が受領することで右物件を明渡す合意が成立していることが認められ、これら事実からすれば、甲第一五号証の二の成立の真正およびその記載内容は極めて疑わしく、原告本人の尋問結果部分もたやすく措信し難い。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
さらに、原告は訴外内田に対し、番号10の物件の明渡世話代として二〇万円を支払った旨主張し、証人内田連治の証言および原告本人尋問の結果、これらにより成立を認めうる甲第一五号証の四によれば、訴外内田は、昭和四三年九月二八日ごろ原告から二〇万円を受領したことが認められるが、右金員の趣旨に関する証人内田連治の証言部分は一貫性を欠き、右二〇万円が番号10の物件の明渡世話料であるか否か分明でなく、また、先に認定した原告と訴外内田間の約定損害賠償金の一部として支払われたものであるかどうかも分明でなく、要するに趣旨不明の金員と認める外はない。のみならず、右二〇万円が、番号10の物件の売却代金の中から支払われたと認めるべき的確な証拠も存しない。
してみると、右二〇万円を番号10の物件の必要経費と認めるわけにはいかない。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号9.10の物件の売上原価は四一〇万二、一一〇円である。
5 番号11の物件について
右物件の取得価額(一六〇万円)および登録税等(一、〇五五円)については当事者間に争いがない。
原告は、右の外、測量費として七、三〇〇円を支払った旨主張し、原告本人尋問の結果中には右主張に副う部分が存するけれども、これを裏付ける資料はなく、甲第二七号証(五、八〇〇円の請求書)は作成者も明確ではなく、これをもって、裏付け資料とすることはできない。
よって、番号11の物件の売上原価は一六〇万一、〇五五円である。
6 番号12の物件について
右物件の取得価額(二五万三、二八〇円)および登録税等(二万三、九〇三円)については当事者間に争いがない。
原告は、分筆登記料として訴外永江測量に七、〇〇〇円を支払った旨主張し、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、これを裏付けるべき資料はなく措信し難い。
他に右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号12の物件の売上原価は二七万七、一八三円である。
7 番号13.14の物件について
右物件の取得価額(一七二万二、〇〇〇円)および放棄競売保証金(二〇万五、〇〇〇円)については当事者間に争いがない。
成立に争いのない乙第四七号証によれば、右物件の登録税等(郵送料を含む)は三万七、一二五円であることが認められる。
原告は、登録税等について一一万三、三二九円と主張するが、これを認めるに足りる証拠はなく、右主張は採用できない。(なお、前掲乙第四七号証によれば、右物件は競落により取得したものであることが認められるから、代書費用は要しないこと明らかである)。
次に、原告は不動産取得税として六万七、九九二円を支払った旨主張するが、右事実を認むべき証拠はなく、却って、成立に争いのない乙第一五一、第一五二号証、弁論の全趣旨により成立の認められる乙第一四四、第一四五、第一五〇号証によれば番号13.14の物件は、訴外成瀬君子が競落人であるので、原告には不動産取得税は課されていないこと、右物件上にあった家屋も、同様に訴外成瀬君子が競落し、直ちに取りこわし、滅失登記をしたので、右家屋に対する不動産取得税も課せられていないことが認められ、これに反する原告の右主張は理由がない。
また、原告は訴外西山弘に対し明渡しの世話代として五万円を支払った旨主張し、甲第一六号証および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、右物件の売買に関して仲介等をしたのは、前掲乙第一〇四号証、証人大山義隆の証言により成立の認められる乙第一二三、第一二四号証によれば、訴外三矢一郎であり、訴外西山弘は関与していないことが認められるから、右甲第一六号証の記載内容および原告本人尋問の結果部分は措信し難く、他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号13.14の物件の売上原価は一九六万四、一二五円である。
8 番号15の物件について
右物件の取得価額(八四万五、〇〇〇円)、登録税等(一万七、六三〇円)、不動産取得税(九、五四〇円)および放棄競売保証金(一二万五、〇〇〇円)については当事者間に争いがない。
原告は、右の外、訴外岡本恭治に対し一〇万円を支払った旨主張するが、甲第一七号証の一(領収証)の「岡本恭治」の氏名は原告が自筆したものであり(この事実は原告本人尋問の結果により認める。)、名下の印影も、原本の存在・成立につき争いのない乙第七三号証中の岡本恭治の押捺した印影と全く異なること、成立に争いのない乙第一二二号証(原告が名古屋国税不服審判所に提出した収支メモの謄本)には原告の右主張に副う記載がないこと、証人大山義隆の証言により成立を認めうる乙第一二七号証によれば、訴外岡本は、原告の依頼で、原告が競落した本件物件の明渡し方を従前の所有者訴外若松に交渉したが、右訴外人は競落価格の倍額以上の価格で原告から右物件を買い受けたことが認められ、原告が訴外岡本に一〇万円を支払う実質的理由に乏しいこと、等からして右甲第一七号証の一が真正に成立したとは認め難く、その記載内容および原告本人の右主張に副う供述部分は措信し難い。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
また、原告は、訴外内田に対し三七万七、〇〇〇円を支払った旨主張するところ、甲第一七号証の二には右主張に副う記載があり、証人内田連治および原告本人は右甲号証は原告が本物件を競落する際、訴外内田が取得価額の一部を出捐したので、それに対する利益配当ないしは礼金である旨供述する。
しかしながら、前掲乙第一二二号証には、右主張・供述に副う記載がないこと、証人内田連治は右出捐分については別途返済を受けた旨証言しおり、右甲号証は、その分についての領収証であると考えられる余地も多分にあるから、甲第一七号証の二の記載内容からして、原告主張の趣旨の金員が訴外内田に支払われたとは即断できず、証人内田連治および原告本人の前記供述部分はたやすく措信し難い。
他に原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
さらに、原告は執行費用として七、〇〇〇円を出捐した旨主張するが、右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号15の物件の売上原価は九九万七、一七〇円である。
9 番号16の物件について
右物件の売上原価(九〇万一、五二五円)については当事者間に争いがない。
10 番号17の物件について
右物件の登録税等(一、七〇〇円)については当事者間に争いがない。
成立に争いのない乙第七七号証の一ないし五 証人森茂伸の証言(第一回)により成立の認められる乙第七五号証によれば、原告は昭和四一年一月二五日訴外近藤正夫から右物件(土地、合計六八六平方メートル)を含む五筆の土地(合計一、九二八平方メートル)を含む五筆の土地(合計一、九二八平方メートル)を一括して約五〇万円(その正額な額は分明でない)で買受けたことが認められるから、右物件の取得価額を、右買受価額を基礎として按分算出すると一七万七、九〇五円(<省略>)となる。
原告は番号17の物件の取得価額は四六万円である旨主張し、甲第一八号証の三および原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するけれども、右甲第一八号証の三は第三二回口頭弁論期日(昭和五三年三月二七日施行)に至って提出されたものであることおよび前掲乙第七五号証に照らして、右甲第一八号証の記載内容および原告本人尋問の結果部分は措信し難く、他に前記認定を覆し、原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
原告は、代書費用、測量費として、二万四、〇〇〇円を出捐した旨主張し、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するけれども、これを裏付ける資料はなく、措信し難い。
なお、前掲乙第七八号証によれば、本物件についての所有権移転登記申請にかかる代書費用は八五〇円であることが認められ、右は、前記争いのない登録税等一、七〇〇円の中に含まれているものと認められる。
他に、原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
また、原告は、本物件売買の仲介手数料として二万七、六〇〇円を要した旨主張し、原告本人は、右金員は甲第一八号証の一・二(領収証)に記載されている金額(合計五万円)の一部である旨供述するが、右甲第一八号証の一・二に記載されている「沢田丹治」の住所・氏名等の筆跡は、原本の存在・成立につき争いのない乙第六八号中の「沢田丹治」の住所・氏名等の筆跡と異なること、右各号証は本訴提起後三年以上を経過して提出されたものであることからすると、各甲第一八号証の一・二が真正に作成されたものかどうか極めて疑わしく、その記載内容および原告本人尋問の結果部分は措信し難い。
他に、原告の右主張事実を認むべき証拠はない。
従って、番号17の物件の売上原価は一七万九、六〇五円である。
以上総合すると、不動産売買に関する売上原価は、昭和四二年分一、一六九万二、四二一円、昭和四三年分一、五〇五万七、八四五円となる。
(二) 租税公課
証人大山義隆の証言、右証言により成立を認めうる乙第八三、第八六号証の各一・二、第八九ないし第一〇〇号証の各一・二によれば、原告の租税公課は、被告主張のとおり昭和四二年分三万一、三〇〇円(内訳、自動車税二万一、七五〇円、固定資産税九、五五〇円)、昭和四三年分一七万三、七五〇円(内訳、自動車税二万四、〇〇〇円、固定資産税一二万〇、八〇〇円、事業税二万八、九五〇円)であることが認められ、これに反する原告の主張は採用できない。
(三) 通信費
証人森茂伸の証言(第二回)により成立の認められる乙第一〇一、第一〇二号証によれば、通信費(原告の住所に設置されていた猿投局四五-〇三三三番の電話料および使用料)は昭和四二年分七万五、二四〇円、昭和四三年分八万五、一六二円であることが認められ、これに反する証拠はない。
原告は、通信費として昭和四二年分一八万三、二四〇円、昭和四三年分二〇万一、一六三円を主張するが、右事実を認むべき証拠はない。
(四) 修繕費
証人森茂伸の証言(第二回)により成立の認められる乙第八三号証の一・二によれば、原告は、昭和四二年九月八日買受けたブルーバードP五一〇TK型の車検登録費用として一、七〇〇円を支出したことが認められる。
原告は、修繕費として、昭和四二年分一五万〇、五〇〇円(内訳、車検登録費一、五〇〇円、車両修繕費八万七、〇〇〇円、オイル代一万二、〇〇〇円、その他五万円)、昭和四三年分一四万二、五〇〇円(内訳、車検登録費一、五〇〇円、車両修繕費七万四、〇〇〇円、オイル代一万四、〇〇〇円、ワックス代三、〇〇〇円、その他五万円)を主張するが、右主張事実を認むべき証拠はないから、右主張は採用できない。
(五) 消耗品費
証人森茂伸の証言(第二回)により成立の認められる乙第一〇三号証によれば、消耗品費(原告が豊田市貝津町鉄砲迫三〇-一深見スタンドで購入したガソリン代)は、昭和四二年分五万九、八一五円、昭和四三年分五万六、七五〇円であることが認められ、他にこれに反する証拠はない。
原告は、消耗品費として、昭和四二年分二〇万四、〇〇〇円、昭和四三年分二一万七、〇〇〇円を支出した旨主張するが、右主張事実を認むべき確たる証拠はない。
(六) 減価償却費
前掲乙第八三号証の一・二によれば、原告は、訴外愛知日産自動車から昭和四一年九月にブルーバードDP四一一W型新車を六六万円で買受け、昭和四二年九月に右自動車を下取り車(下取り価格三五万五、〇〇〇円)として、右訴外会社から、ブルーバードP五一〇TK型新車を七五万五、〇〇〇円で買受けたことが認められ、これに反する証拠はない。また、原告が右自動車を営業の用に供していたことは被告の認めるところである。
ところで、減価償却の方法を選定していない場合の減価償却の方法は、定額法によることとされているところ(所得税法四九条一項、同法施行令一二五条一項)、弁論の全趣旨によれば、原告は減価償却の方法を選定して届出ていないことが認められるので、定額法により右各自動車の減額償却費を定額法により計算することとする。
定額法による算式は次のとおりである。
償却の基礎になる金額〔取得価額-残存価額(取得価額×〇・一)〕×償却率=減価償却費(なお、被告主張の省令によれば、原告使用にかかる自動車の耐用年数は六年であり、定額法の償却率は〇・一六六である。)
そこで、本件係争各年分の減価償却費は次のとおり算出される。
1 昭和四二年分
(イ) ブルーバードDP四一一W型分
(取得価額) (残存価額) (償却率) (償却期間)
〔六六万円-六六万円×〇・一〕×〇・一六六×9/12=七万三、九五三円
(ロ) ブルーバードP五一〇TK型分
(取得価額) (残存価額) (償却率) (償却期間)
(七五万五、〇〇〇円-七五万五、〇〇〇×〇・一)×〇・一六六×4/12=三万七、五九九円
右(イ)と(ロ)の合計額一一万一、五五二円が昭和四二年分減価償却費である。
2 昭和四三年分
(ブルーバードP五一〇 TK型の取得価額)
(七五万五、〇〇〇円-七五万五、〇〇〇×〇・一)×〇・一六六×12/12=一一万二、七九七円
右一一万二、七九七円が昭和四三年分減価償却費である。
原告は、減価償却費として、昭和四二年分二〇万七、三四二円、昭和四三年分二一万三、〇六〇円を主張するが、右主張を肯認すべき資料はなく、右主張は採用し難い。
(七) 利子割引料
前掲乙第八三号証の一・二、証人大山義隆の証言により成立の認められる乙第八四、第八五号証によれば、原告は、前項の各自動車の購入にあたり、その購入代金の一部を割賦(月賦)支払いとしたこと、そのため原告は右代金の一部に月賦手数料(利息)を付加して支払ったこと、そして、その明細は次のとおりであったことが認められ、これに反する証拠はない。
1 昭和四一年九月購入分(ブルーバードDP四一一W型)
(1) 月賦元金 二七万円
(2) 月賦月数 一二ケ月
(3) 各月賦手形の支払期日 昭和四一年一〇月から同四二年九月までの各月末
(4) 月賦手数料総額 二万三、三二八円(二七万円×一二×三〇日(一ケ月の日数)×〇・〇〇〇二四(日歩))
(5) 各月賦手形の金額 二万四、四四四円
右の内訳 月賦元金 二万二、五〇〇円
月賦手数料 一、九四四円
2 昭和四二年九月購入分(ブルーバードP五一〇TK型)
(1) 月賦元金 四〇万円
(2) 月賦月数 二四ケ月
(3) 各月賦手形の支払期日 昭和四二年一〇月から同四四年九月までの各月末
(4) 月賦手数料総額 六万九、一二〇円(四〇万円×二四×三〇日(一ケ月の日数)
×〇・〇〇〇二四)
(5) 各月賦手形の金額 一万九、五四六円
右の内訳 月賦元金 一万六、六六六円
月賦手数料 二、八八〇円
しかして、昭和四二年分の必要経費となる利息(月賦手数料)の額は、前記1の月賦手数料一、九四四円に九(昭和四二年一月から同年九月までの各月末を支払期日とする月賦手形の数)を乗じた一万七、四九六円と前記2の月賦手数料二、八八〇円に三(昭和四二年一〇月から同年一二月までの各月末を支払期日とする月賦手形の数)を乗じた八、六四〇円の合計額二万六、一三六円である。
昭和四三年分の必要経費となる利息(月賦手数料)の額は前記2の月賦手数料二、八八〇円に一二(昭和四三年中の各月末を支払期日とする月賦手形の数)を乗じた三万四、五六〇円である。
原告は、利子割引料として、昭和四二年分三万二、四〇〇円、昭和四三年分七万二、〇〇〇円を主張するが、右主張を肯認すべき証拠はない。
(八) 損害保険料
前掲乙第八三号証の一・二によれば、原告は昭和四一年九月三〇日ブルーバードDP四一一W型を購入した際今後二ケ年間の自賠法による強制賠償保険料として一万五、五一〇円を支出していることが認められるところ、原告は右自動車を昭和四二年九月八日下取車として、他に譲渡しているので、右保険料のうち、昭和四二年分の必要経費となる金額は五、八一七円(一万五、五一〇円×9/24)である。ところで、右譲渡の際、譲受人との間で精算されるべき部分七、一〇八円(一万五、五一〇円×11/24)について、被告は、右精算が行われたかどうか明らかではないとして、右金額分精算が行われたかどうか明らかではないとして、右金額分も昭和四二年分の必要経費として認定しているが、右認定はもとより不当とはいえないから、右自動車に関する損害保険料は一万二、九二五円となる。
前掲乙第八三号証の一・三によれば、原告は昭和四二年九月八日ブルーバードP五一〇TK型を購入した際今後二ケ年間の強制賠償保険料として一万七、二三〇円を支出していることが認められるから、昭和四二年分の必要経費に算入される分は二、八七二円(一万七、二三〇円×4/24)となる。
従って、昭和四二年分損害保険料は一万五、七九七円である。
そして、昭和四二年九月八日購入のブルーバードP五一〇TK型につき、昭和四三年分の必要経費に算入すべき損害保険料は八、六一五円(一万七、二三〇円×12/24)となる。
原告は、昭和四三年分損害保険料として、一万七、二三〇円と主張するが、右判示したところにより理由がないこと明らかである。
(九) 雑費
雑費のうち、競売代金遅延費用(昭和四二年分四万三、五八九円、昭和四三年分一、三四八円)については当事者間に争いがない。
原告は、右の外、昭和四二年分につき、調査交際連絡委託等費用三六万円、法務局関係費用(登記簿謄本交付、閲覧等)一八万円を、昭和四三年分につき貸金収入に要した費用(弁護士費用等)二四万二、一七〇円、調査依頼打合せ等費用三六万円、法務局関係費用一八万円をそれぞれ支出した旨主張し、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、右供述部分を裏付けるべき証拠はなく、措信し難い。他に右主張事実を認むべき証拠はないから、右主張は採用できない。
なお、原告本人尋問の結果によれば、原告は訴外大岩初治に対する貸金元本の請求訴訟をなすにつき、右弁護士費用等を要したことが認められるが、これは、訴外大岩初治に対する前記貸金利息等の収入についての経費とすべきものでないことは明らかであるから、右費用等を昭和四三年分の必要経費に算入すべきであるとする原告の主張は理由がない。
(一〇) 競売保証金放棄損失
競売保証金放棄損失額(昭和四二年分五四万一、〇〇〇円、昭和四三年分八一万三、五〇〇円)については当事者間に争いがない。
(一一) 販売手数料
昭和四二年分販売手数料(二二万円)については当事者間に争いがない。
原本の存在・成立につき争いのない乙第七〇号証の一ないし三、第七一号証の一、二、第七二、第七三号証および原告本人尋問の結果によれば、原告が訴外西山弘外三名に支払った昭和四三年分販売手数料は合計八〇万円であることが認められ、これに反する証拠はない。
原告は、右販売手数料は八五万円である旨主張するが、右主張事実を認むべき証拠はない。
(一二) 以上(一)ないし(一一)を総合すると、営業所得にかかる必要経費は、昭和四二年分一、二八一万八、五五〇円、昭和四三年分一、七一四万四、三二七円となる。
(営業所得金額)
しかして、本件係争各年分における営業所得金額は昭和四二年分四七八万四、九一三円、昭和四三年分七二九万一、二五三円である。
三 農業所得金額について
(一) 昭和四二年分
原本の存在および成立について争いのない乙第六六号証および弁論の全趣旨によれば、原告は豊田市に対し、「耕作田畑地積調査票」(乙第六六号証)を提出しているが、右調査票に記載されている土地のうち、大字越戸地内所在の土地は、原告の住所地から比較的遠隔地に存し、また右土地は原告が販売目的で購入したもの(たな卸資産)と認められるので、右土地を除いた原告の昭和四二年中における耕作面積(畦畔分を除く。)は田(一毛作)四〇・九四アール(四反一畝一四歩)、畑(普通畑)二五・〇三アール(二反五畝八歩)、合計六五・九七アール(六反六畝二二歩)であることが認められる。
ところで、証人斉藤次夫の証言によれば、被告は、岡崎税務署と同署管内市町村が共同して策定した「農業所得標準率表」(証人斉藤次夫・同大山義隆の各証言により成立を認め得る乙第八一号証)等により、原告の昭和四二年分農業所得金額を算定したことが認められるが、証人斉藤次夫・同大山義隆の各証言および弁論の全趣旨によれば、右標準率表は、岡崎税務署管内の農業経営者の収入金額および経費等の調査結果等を基準にして策定されたものであり、一般にも公開され、農業所得者の所得税および住民税の所得申告の指針として広く利用されているものであって、内容的にも合理性を有するものと認められる。
しかして、右標準率表によれば、田一〇アール当りの標準所得額は三万八、九〇〇円、畑一〇アール当りの標準所得額は二万四、八〇〇円であるから、原告の前記耕地地積を基に特別経費等控除前の所得金額を算出すると、田に関する分一五万九、二五六円、畑に関する分六万二、〇七四円合計二二万一、三三〇円となる。
次に、右所得金額から控除すべき特別経費等の額であるが、弁論の全趣旨によれば、原告は動力耕運機(普通型)一台と通風乾繰機一台を使用していたことが認められるところ、前記標準率表(乙第八一号証)によれば、動力耕運機一台当りの固定経費は四万四、一〇〇円、通常経費は耕作地積一〇アール当り五五〇円、通風乾繰機の固定経費は一台当り四、五〇〇円、通常経費は田耕作地積一〇アール当り一五〇円と定められていることが認められるから、原告の動力耕運機の固定経費は四万四、一〇〇円、通常経費は三、六二九円(六五・九七アール×五五円)、通風乾繰機の固定経費は四、五〇〇円、通常経費は六一五円(四〇・九四アール×一五円)となる。
そして、証人大山義隆の証言により成立の認められる乙第八二号証によれば、原告が土地改良区に支払った土地改良費のうち農業所得の必要経費となる部分の金額は一、二六〇円、予約米減税(昭和四三年法律第一号「昭和四二年度産米穀についての所得税及び法人税の臨時特例に関する法律」第一条)は三、五二〇円であることが認められる。
従って、前記特別経費等控除前の所得金額から、右特別経費等の額合計五万七、六二四円を控除すると、昭和四二年分農業所得金額は一六万三、七〇六円となる。
原告は、耕作面積は田一、五一二平方メートルであって、その収入金額は四万五、〇〇〇円であり、耕運機の修繕費等として三万円を出捐しているから、昭和四二年分農業所得金額は一万五、〇〇〇円である旨主張し、原告本人尋問の結果中には、右主張に副う部分が存するが、前掲乙第六六号証、同第八一、第八二号証に照らし、右尋問結果部分は措信し難い。
他に前記認定を覆すに足る証拠はない。
(二) 昭和四三年分
成立に争いのない乙第三一号証によれば、原告は、昭和四三年分所得税の確定申告書において、同年分農業所得として一四万八、四〇〇円と記載していることが認められるから、右と同額の同年分農業所得があったものと推認され、これを覆すに足る証拠はない。
原告は昭和四三年分農業所得についても、昭和四二年分におけると同様の主張・供述をしているが、右乙第三一号証に照らし採用し難い。
四 譲渡所得金額(昭和四二年分)について
原告が昭和四二年九月八日他に譲渡したブルーバードDP四一一W型につき、一九万八、一七九円の売却損のあったことは被告の自認するところである。
五 以上によれば、原告の本件係争各年分における総所得金額は、昭和四二年分四七五万〇、四四〇円、昭和四三年分七四三万九、六五三円となるから、右各総所得金額の範囲内でなされた本件課税処分はいずれも適法である。
第三結論
よって、本件課税処分の取消しを求める原告の本訴請求はいずれも失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松本武 裁判官 浜崎浩一 裁判官 原田卓)
別表一
課税処分表
一、昭和四二年分
<省略>
備考
1. 「営業所得金額」および「農業所得金額」とは、事業所得金額を更に細分したものである。
2. 「(三)課税総所得金額」、「(六)加算税の基礎となる税額」各欄の数額は、千円未満の端数切捨後の金額である。
3. 「(五)年税額」「(七)過少申告加算税額」各欄の数額は、百円未満の端数切捨後の金額である。
二、昭和四三年分
<省略>
備考
1. 「営業所得金額」および「農業所得金額」とは、事業所得金額を更に細分したものである。
2. 「(三)課税総所得金額」、「(六)加算税の基礎となる税額」各欄の数額は、千円未満の端数切捨後の金額である。
3. 「(五)年税額」「(七)過少申告加算税額」各欄の数額は、百円未満の端数切捨後の金額である。
別表二
総所得金額計算表
<省略>
別表三
営業所得金額計算表
<省略>
<省略>
別表四
総収入金額の明細
(一) 昭和四二年分 総収入金額 一七、六〇三、四六三円
イ 不動産売買に関する収入金額の明細
<省略>
<省略>
ロ 貸金利息等に関する収入金額の明細
<省略>
(二) 昭和四三年分 総収入金額 二六、〇五五、五八〇円
イ 不動産売買に関する収入金額の明細
<省略>
<省略>
<省略>
ロ 貸金利息等に関する収入金額の明細
<省略>